金曜日, 6月 01, 2007

生物と無生物のあいだ

著者は分子生物学者にして一流の小説家だと思う。生命とは何か?かつて、シュレーディンガーも問うたこの「開かれた」問題に対して、詩的で美しい表現と的確なメタファーが、分子機械的な静的生命観から動的平衡状態としての生命という動的生命観に読者をガイドしてくれる。スキャンダラスなDNA発見の話、ルドルフ・シェーンハイマーの先見的な実験、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)の発明秘話、そして、ノックアウト(叩き壊した)したのにノックアウトされないマウス。これらの多岐にわたる話題がみごとに動的生命観に接続していく。「生命とは要素が集合してできた構成物ではなく、要素の流れがもたらすところの効果である。」著者の文才が引き立つ名著。

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