土曜日, 5月 31, 2008

輪読会

 理研に来てからずっと輪読会を週一ぐらいのペースでやっている(ここ数年はみんな忙しくて、ペースが落ちてしまったが)。読みたい本を1冊選び、持ち回りで各章の内容を発表し、みんなで議論する。1人では難しくて挫折してしまうような本も、これならば気合いが入るので頑張って読める。参加者は個性派ぞろいの猛者たちで、議論がとても楽しい。ときには3時間近く甲論乙駁することもある。これが輪読会の醍醐味。
 今読んでいる本は、行動主義心理学の巨人、スキナーのVerbal Behavior(言語行動)。ちなみに、この本はAmazonで品切れになっているが、Skinner Foundationから直接購入できる(もれなく、スキナー・シャーペンも付いてくる)。これまで読んだ本の中で1位、2位を争うぐらいの難解な本だ。
 今回は僕が、8章のVerbal operant as a unit of analysisの前半を担当した[レジュメ]。講義でくたくただったのと、スキナーの考えが独特なので、重要なポイントを把握するのにかなり時間がかかった。スキナーの言語観は次のように言うことができる(と思う)。
  • 記号体系としての言語ではなく、個人行動としての言語行動を分析する
  • 真空中に言語は存在せず、使用、媒体、文脈、社会のドロドロの中にあってこその言語
  • 意味は実体ではなく機能
これらの考え方は、チョムスキー派の考え方と真逆で、認知言語学複雑系の考え方に近い。ただし、スキナーは徹頭徹尾、言語行動の制御変数の分析に終始する。このかたくなさが恰好良くもあり、腹立たしくもある。おでこの広さは伊達じゃない。
 これまでに読んだ本は次の3冊。生成文法の入門書「The Atoms of Language」、言語発達に対する認知言語的アプローチ「Constructing A Language」、力学系的認知観「A Dynamic Systems Approach to the Development of Cognition and Action」。いずれも良書です。





月曜日, 5月 26, 2008

マスコラボレーション

 ウィキノミクスという本を読んでいる。ウィキノミクスとここで呼んでいるものは、次の4つが伴ったWebの使用が創造する新しい知の在り方のことだ。
  1. オープン性
  2. ピアリング
  3. 共有
  4. グローバルな行動
マスコミュニケーション(マスコミ)が一方通行の情報の流れであるのに対して、ウィキノミクス的な世界では、すべての参加者が能動的な情報の受信者かつ発信者であり、マスコラボレーションが成立する。現在、あらゆるものがオープンになり、ユーザーによって新しい価値が生成される様は、
  • Wikipedia みんなで作る現在進行形の辞典
  • Wikibooks みんなで作る現在進行形の教科書
  • Wikiversity みんなで作る現在進行形の大学
などを見れば一目瞭然だ。
 さらに、最近は大学もこの流れに乗ろうとしていて、東大もMITもいくつかの講義(と講義資料)を公開しており、無料で見ることができる。
ただし、どう見てもWikiシリーズと比べて、しぶしぶ感がするのは否めない。苦労して準備した講義資料をただで配るよりも、教科書にしてお金を稼ぎたいというのが教員の本音なのだろう(ちなみに、僕は講義資料をすべて公開している)。アカデミックの世界にもウィキノミクス的な風が吹くかどうかは、興味深いところだ。情報を囲い込むのではなく、公開することで不特定大多数とのコラボレーションの道が開け、それによって自分もみんなもハッピーになる、そんな知の在り方が今生まれつつある。

日曜日, 5月 18, 2008

マッシュマンズカフェにて

32回目の誕生日を迎えた。32=2×2×2×2×2=pow(2,5)、二進数だと100,000。学振1年目。研究室はレビューの年。いろんな意味で節目の年。今日は午後から池袋のマッシュマンズカフェで、コーヒーを飲みながら論文の直しと今後の計画を立てた。店内は、赤い壁にロックな人たちの写真、独特の家具、常にロックが流れている、そしてメニューにはホットコーラなんてある、ファンキーで変なカフェ。これはこれで僕は好きだ。
 今日はいまいち気分が乗らない。32という潔い偶数になり、天気がこんなに良くて、コーヒーもチョコバナナプリンもおいしいのに、心がどんよりと暗いのはとても寂しいことだ。ならばどうすれば良いのか?こうしてもんもんとしている間にも、Googleは己の哲学[Link]を引っさげて、”Make the world a better place”をとてつもないスケールで実行している[講義資料]。そして、次のような言葉で学生たちをencourageしたSteve Jobsは、3番目の林檎(1番目はアダムの林檎、2番目はニュートンの林檎、3番目はApple Inc.、4番目は冷蔵庫の中の朝食リンゴ、なんて:-) を蘇らせ、メディアの在り方を根底から変えている。
Your time is limited, so don't waste it living someone else's life. Don't be trapped by dogma -- which is living with the results of other people's thinking. Don't let the noise of other's opinions drown out your inner voice. And most important, have the courage to follow your heart and intuition. They somehow already know what you truly want to become. Everything else is secondly. -- Steve Jobs
やりたくないことやらないようにがんばるのではない、やりたいことやるのだ。

僕的採点マッシュマンズカフェ
  • コーヒー: ☆☆(ブレンドコーヒーは400円。味は値段相応かな。)
  • ケーキ: ☆☆(オリジナルのデザートが多い。隣の女の子たちが食べていたパスタと焼き飯がおいしそうだった。)
  • 雰囲気: ☆☆(好き嫌いが分かれるところ。僕はロック好きなのでOK)

よーく考えよー、お金は大事だよー

 今月はお金について考える機会が多い月だった(まだ5月は終わってないけど)。
  • その1 学振の給料がまだ入ってこない。育英会の奨学金と同じで、年度の初めの月の給料は次月にまとめて入るのだ。つまり、4月分は5月まで御預け。何かと出費が多い時期だけに厳しい、、、。
  • その2 学振から頂ける軍資金は予想を大幅に下回り、来年以降も変わらない。削減のしわ寄せがこんなところにも来たのか。学振は外部資金を獲得することが禁止されているため、これでやり繰りせねばならない。
  • その3 8月にオレゴンでやる国際会議[Link]に行くための航空チケット代を立て替えた。夏休みということと、学会の後にUCLAによるために周遊航空券(複数都市に滞在できる券)を手配した。な、なんと、ガソリン代と税金を含めると24万6千円成り。飛行機でブーンと飛んで、ブーンと帰ってくるだけで、このお値段。高いー!これで今年の旅費は終了です。
  • その4 Life Cardは誕生日月ポイント5倍、ということで、カードを取得。数ヶ月前からできるだけカードで払えるものは全てLife Cardで払うようにした。これで、年間数千円分のポイントになる。カードや銀行などのことをWebで調べて、お金の有効な使い方を考えさせられた。
 「お金は大事だよー」ということで、最近読んだ本を紹介します。「14歳からのお金の話」。物々交換から始まって、お金や株の仕組み、政治や経済の仕組みをわかりやすい説明とかわいいイラストで説明してくれる。32歳にも価値ある一冊。


 もっと進んだ話題については、「スタバではグランデを買え」が面白かった。なぜ携帯電話が1円で買えるのか?100円ショップの前にある自販機で120円のジュースが売れるのはなぜか?経済というのは奥が深い。

月曜日, 5月 12, 2008

フラガールだっぺ

 僕が生まれ育った町、福島県いわき市にある常磐ハワイアンセンター(現 スパリゾートハワイアンズ)を舞台にした映画、「フラガール」を観た。この作品、公開前は全く注目されていなかったそうだが、日本アカデミー賞を含めて5つも賞をとったそうだ。僕も「そんなにいい映画なの?」と半信半疑だったが、感情移入するのに時間はかからなかった。見覚えのある炭鉱の風景、炭鉱と共に生きる人々の暮らし、聞き慣れた方言。そうです。僕はここで生まれ、ここで育ったのです。僕が過ごしたのは閉山後なので(僕が生まれた1976に常磐炭鉱は閉山[Link])、炭鉱の栄枯盛衰の詳細は知らない。でも、僕が通った小・中学校は、かつては炭鉱で働く家庭の子どもたちが通ったマンモス校で、確かに校舎にはその面影があった(今はどちらも新校舎になってしまった)。
 実在の人物がモデルになっているそうで、松雪泰子、蒼井優、豊川悦司など、個性的な俳優陣が味のある演技をしている。特に素晴らしいのがフラダンスのシーン。きれい!そして、蒼井優のダンスが素晴らしい。世の男性陣は気づいたに違いない。蒼井優×方言×フラダンス=最強、の法則。常磐ハワイアンセンタ-を作品にするなど普通は思いもよらないし、それがここまでのエンターテイメントになるなんて、すごい!まだ観てない人はぜひ観てほしい。ウクレレの挿入歌も素敵。ジェイク・シマブクロのCD、ええ、買いますとも。


木曜日, 5月 08, 2008

ほろ苦いアイスコーヒー

 水曜のデフォルト。大学での講義を終えると、浅い眠りのまま電車に揺られ、気がつくと新宿に着いている。講義内容を頭の中で反芻し、良かったところ悪かったところを一人反省会する。今日は、皇琲亭([Link])がその会場となった。
 薄暗い照明がアンティークのテーブルを照らし、店内にはジャズが流れている。そして、正装した店員さんが手際よく仕事をこなしている。プロの仕事というのはほれぼれする。コーヒーを入れ、お客さんに出す、この一連の流れに確立したスタイルとマナーがある。僕はアイスコーヒーとオレンジケーキを注文した。珈琲はよくここで飲むけど、ケーキは初めて食べた。やや小さめで、しっとりとしたスポンジとマーマレードがマッチしておいしかった。ここのコーヒーはやや高めだが、ケーキは450円程度。
 ガムシロップ控えめのアイスコーヒーを飲みながら、今日の授業を振り返った。「Aha!」という学生の表情に一喜し、「全然わかんない」というコメントに一憂する。単に事実を列挙するなら教科書を読めば済む。でも、講義というのは1つのストーリーでなくてはならない。だから、毎回、自分の言葉でストーリーを紡ぎ、学生のリアクションに一喜一憂する。今日はほろ苦い。
 

日曜日, 5月 04, 2008

zoom, zoOM, ZOOM

 休日だったので池袋をぶらついてきた。お昼を食べようと思ったのだけど、食欲がわかないし、頭がボー、体はダルッ。どうしたものかと歩いていたら、「ほぐしや」という指圧鍼灸治療院の看板が見えた。昔、鍼でひどい首のコリが消えたことがあったので、久し振りに鍼をうってもらうことにした。
 首、肩、腰が凝ること(これは立派な職業病)、冷え性で胃腸の調子もよろしくないことを告げて、後は担当者にお任せした。背中、腰、首の順に凝っているつぼを探して、リズミカルに鍼をさしていく。とんとんとん。さすがに的確だ。最初はチクッとし、その後にZoomという鈍痛が走る。場所によってはとても痛い。自分では意識していなかったのだけど、左の背中が板のように凝っていたそうだ。冷え性対策で足の裏にはお灸が据えられた。でも、あまり熱さを感じなかった。冷えがひどいとそうらしい。20分ぐらいの間に15本ぐらいの鍼がさされ、人間ハリネズミになった。30分の治療を終えた後は、あれ、不思議、不思議。食欲が回復し、リセットボタンを押されたようにすっきりした。でも、鍼はベホイミじゃないんだから、ふだんから体を労らないとね。31年使っている体なんだから。
 こうして食欲を取り戻したので、お昼を食べに行くことにした。その途中、以前見かけたドトール猫に再会。誰かからもらったカリカリをもりもりと食べていた。よし、今日はラーメンだ。

土曜日, 5月 03, 2008

アルファギーク

 僕がほぼ毎日チェックしてるBlogの1つに、小飼弾さんの「404 Blog Not Found」がある。このタイトルからして人を食ったようなネーミングで、このセンスの通り、とてつもない個性の持ち主だ。いつだったか、梅田望夫さんのことを調べていたら、このブログに辿り着いた。ブログの文脈では、アルファ・ブロガーと称される人だ。生き様も強烈で、15歳で大検合格、その後、UCバークレーに留学して、家の事情でドロップアウト。その後、Livedoorの上場やWebにかかわる仕事で活躍している。
 そんな弾さんがWEB+DBで連載していた記事をまとめた本、「小飼弾のアルファギークに逢ってきた」を読んだ。ハッカーのはしくれとして、Webの動向を押さえておきたいと思って買ったのだが、面白くて2日で読んだ。ちなみに、「アルファ」とは動物行動学でリーダーをさす言葉で、「ギーク」とは人付き合いが不得手な知識人、というようなニュアンスがある。この本を読むと、切れ味鋭いコメントと言葉の選び方に、並々ならぬ教養と知性を感じる。時に、あまりの批判力にうざったくもあるのだけど。ギークたちの言葉から伝わってくるのは、好きを貫くという姿勢と実際にやってしまう行動力。これは研究者にも必要な姿勢だとつくづく思う。人の悪口を言ったり、揚げ足取りをするよりも、自らの行動に語らせる方が100倍偉い。「ほらな」って。

木曜日, 5月 01, 2008

時をかけるロボット

 TSUTAYA DISCASで借りた「アイ,ロボット」と「時をかける少女」を観た。前者は、巨匠アイザック・アシモフのSFが原作で、映画の主演はウィル・スミス。ウィル・スミスの演技自体は良かったが、アシモフが描こうとしていた世界観は描けてなく、ぐっと来るものがなかった。ロボット三原則が提案されたアシモフの記念碑的な作品だけに残念。同じ近未来なら、やっぱり僕は攻殻機動隊の世界観の方が断然好き。Matrixが攻殻をもとに作られたのは有名な話だが、なんと、スピルバーグが攻殻の実写版を作るというニュースがあった[Link]。残念な作品になる可能性が大だが、やっぱり映画館で観てしまうんだろうな。
 一方、「時をかける少女」は前から観たいと思っていた作品で、さわやかながら印象に残る素敵な作品だった。メディア祭で賞をとるのもうなずける。筒井康隆の原作の20年後という舞台設定もユニーク。タイムリープと恋愛模様というのは真新しいテーマではないけれど、この作品はアニメとしてよくできている。こちらはお勧め。