土曜日, 8月 30, 2008

ゆらぐ脳

 最近読んだ本を紹介します。池谷裕二さんの「ゆらぐ脳」。以前、理研であったセミナーを拝聴して以来、注目している脳科学者(東大院・准教授)。この本は、木村俊介さんが池谷さんにインタービューをしてまとめたもの。文献も巻末に載っている。献立は次の通り。
  1. 脳を分かる
  2. 脳を伝える
  3. 脳はゆらぐ
 脳の分かり方について、池谷さんがどのような態度で研究に望んでいるのかが紹介されている。また2章では、研究におけるプレゼンテーションの重要さが書かれている。科学も人間の営みである以上、自分だけが納得していては駄目で、第三者に理解されて初めて意味をなす。研究資金を獲得するためにはこの能力は必須だ。研究費、研究費と、申請書に追われる生活はむなしいが、自分の研究費を獲得しなくては何もできないのもまた事実。
 池谷さんの脳観に1つ反論をさせてもらえば、「構造+ゆらぎ=機能」は多分間違い。あえて書くなら、「ゆらぎ<->構造<->機能」。先に構造があるわけではない。ゆらぎから構造が作られ、その構造をもとに機能が発現する。そして、機能は構造を変え、そのためにはゆらぎが必要になる。この3つのカップリングを通じて、安定と不安定を行きつ戻りつするのが、複雑系におけるダイナミックな脳観だ。実験であれ、モデルであれ、これをきちんと示すことが大事。

0 件のコメント: