木曜日, 2月 12, 2009

揺れる思い

 毎日少しずつ蔵書の整理をしている。来月中旬にはアパートを引き払うので、必要最小限の物を残して、残りは処分しなくてはならない。生活用品や衣類は、要不要がすぐに判断できるが、本は思い入れがあるので簡単にはいかない。大学時代、神保町の古本屋でなけなしの金をはたいて買った本や、絶版の学術書、勉強の軌跡のある演習書は絶対捨てられない。今の研究に関係する本ももちろん捨てられない。どれもそれなりに存在理由があるので、なかなか整理ができない。これらの本は、僕の中に取り込まれ、血となり肉となり、僕の「僕らしさ」の骨格となっている。捨てるべきか、捨てざるべきか。
 そこで、学術書を除き、図書館でも借りることができる本は、売るなり捨てるなりし、どうしても未練が残るものは「読んでから手放す」ことにした。その中から、再発掘した2冊の本を紹介したい。
 一冊目は、五木寛之の「生きるヒント」(僕がもっているのは文庫版ですが、デラックス版は文庫版全てを収録してる)。平易な言葉と等身大の目線で書かれた素敵なエッセイ集です。


マーク・トウェインの「ユーモアの源泉は哀愁である」という深い言葉に出会ったのがこの本でした。物事の表裏を意識できるようになったのはそれからです。五木寛之の「青春の門」もお勧めです。
 二冊目は、神谷美恵子の「生きがいについて」。著者は、ハンセン病患者の治療に人生を捧げた精神科医で、その経験から生きがいについて考察している。ゆったりと書かれた文章は、豊かな教養に基づく洞察と深い慈愛に満ちている。こんな時代だからこそ価値ある一冊。

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