偽装は食品業界だけでなく、真理探究が使命の科学界でも起きている。あるはずのデータがないことになったり、ないはずデータがあることになったり。本書はこれまでに起こったデータの捏造や偽造事件を例に挙げながら、研究者の発表倫理の問題に触れ、 “Publish or Perish(発表か死か)”という言葉に集約される科学界の体質に警鐘を鳴らしている(実際、この言葉は研究所にいるとしばしば耳にする)。
私自身、研究を生業にしている者だが、本書を読むまでは学術雑誌インパクトファクター(IF)の正確な定義やオーサーシップの本来の意味すら知らなかった。「世の中には悪いことする研究者もいるが、自分はそうならないようにしよう」という程度の認識でいた。科学は真理を探求し、“巨人の肩”の上に人類の叡智を集積する営みである。これからもそうであり続けるためには、最低限の研究倫理を理解しておく必要がある。IFの定義も知らずに NatureだのScienceだのと騒いでも仕方がない。
大学院を修了してこれから研究者として歩み始める人も、既に研究者として活躍している人も、科学者としての倫理を確認するために一読することをお勧めする。
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