土曜日, 12月 17, 2016

ESL

 おそらくアメリカに留学した人は、誰もが「英語の壁」に悩まされることだろう(バイリンガルでなければ)。今回を含めれば、アメリカに二度留学しているわけだが、アメリカに住んでいるからと言って自動的に英語が上達するわけではない。もちろん日本にいるよりは英語の刺激を受けているわけだが。
 UCLAにいた頃より、むしろ今の方が英語に不自由している。あの頃は学振研究員でほぼお客さん扱いだったので、研究だけやっていればよかった。ラボのミーティングの以外では、それほど議論することなどなかった。ラボの人たちはみな鳥類学のプロなので、自分の説明が拙くても不足分を補完して聞いてくれたので会話が成立していた。また、そんな状態になんとなく甘えていた。
 しかし、今はそれでは通用しない。計算社会科学の話題は多岐にわたる。アメリカの選挙のこと、フェイクニュースのこと、モラルのこと、複雑ネットワークのこと等。知っているけど英語では適切な単語や表現がとっさに出てこないため、説明できないことが多々ある。しかし理屈はどうであれ、英語で説明できないということは、知らないのと結果的に同じである。
 英語を正しい第二言語として話せるよう(English as a second language)勉強し直そう。

p.s. ESL PodcastがPodcastをやめてしまったようだ(有料でmp3と解説をダウンロードすることはできる)。その代わりを探していたら、バイリンガルニュースというPodcastを見つけて、これがなかなか面白くてよかった。

土曜日, 12月 10, 2016

凍える寒さ

 本格的に冬がやって来た。連日外はマイナスの世界。朝晩の冷え込みは顔に刺さるような痛さとして感じられる。Bloomingtonの春夏秋は過ごしやすくて最高だが、冬の寒さは厳しそうだ。
 ワシントンDCの学会出張から戻り、IUのセミナーでの発表も終え、自分の中ではひと段落の感じ。ラボのミーティングも来週が最後。それが終われば年明けまでは小休止。
 僕にとっては残り3ヶ月ちょっとしかないので、今の研究で結果をださないといけない。ここが勝負どころだ。1日24時間じゃ足りない。
 
 

火曜日, 12月 06, 2016

NYDC

 先週はNYのOferのところに行き、先週末から学会のためワシントンDCに来ている。2週連続の出張はしんどい。
 Oferと会ってすぐに議論が白熱し、鳥のさえずりの研究はもちろん、彼がやっているオンライン実験の話で盛りがった。彼の容赦ない議論の姿勢が好きだ。普段、いかに自分が甘っちょろい議論をしているかを思い知らされる。Hunter Colledgeの心理学部のセミナーで発表もして、言語発達を研究をしている先生からいいアドバイスをもらった。
 一方、ワシントンDCでの学会は共同研究者のRishemjitが発表する。明日が発表で、期せずそのセッションの座長を務めることになった。内容はいいと思うので、あとは発表の仕方しだい。
 そしてブルーミントンに帰った翌日は、IUで自分の発表。それが終わればひと段落だ。やっと研究に集中できる。あと残り4ヶ月か...。

火曜日, 11月 22, 2016

一家で風邪

 3週間ほど前に妻が風邪をひき、しばらく咳がひどい状態が続いた。その風邪が僕にうつり、ここ2週間ほど具合が悪い。特に咳がひどく、時々自分でコントロールが効かなくなる。咳止めシロップを朝晩飲むもあまり効果がなかった。
 何年か前にも同じような症状になり、痰を切る漢方を処方されて効果があったことを思い出した。そこで、痰を切るタイプの咳止めに変えたら、だいぶ治まってきた。1日寝ても治らないような風邪になったのは久しぶりだ。
 そうこうしているうちに、鴻志に風邪がうつってしまったようだ。幸い、すぐに回復した。
 ここしばらく体調も気分もすぐれず、研究が思うように進まなかったので、来週のNY出張までにはいろいろ仕事を片付けたい。健康って大事。
 

土曜日, 11月 19, 2016

さきがけ

 さきがけ(社会と調和した情報基盤技術の構築)に採択され、昨日、プレス発表がありました。[Link] 書類の作成に約1ヶ月をかけ(1つのストーリーにまとめるのに大変苦労しました)、少なくとも書類審査で落とされることはないという自信がありました。面接の知らせが来たのが10月の初めで、面接のために10/22~26に一時帰国。当日面接官に配布する発表資料と補足資料を入念に準備し、面接前日も6時間は発表練習をし、決め台詞まで考えて臨みました。
 自分が今一番研究したいことをそのままぶつけました。その研究課題が「多様な情報流通と価値創造を支援するソーシャル・ネットワーキング原理の構築と実証」。ニッチなキラキラした感じの研究課題名が多い中(別に悪口ではありません)、実にオーソドックスでしわしわなタイトル。研究内容で勝負できるという自負があるからこそです。
 このチャンスを生かして、計算社会科学に本腰を入れて取り組みます。

土曜日, 11月 12, 2016

下り坂を走るように

 この頃、地球が自転のスピードを上げたことを疑うぐらい1日が過ぎるのが早い。毎日、セミナーやらミーティングやらがあって、あれよあれよと言う間に帰宅の時間になる。IUの先生たちを見ていると、よくあんな多忙なスケジュールでも研究を楽しみかつ成果を出しているなと感心する。
 NY出張、ワシントン出張(国際会議)、そしてIUのセミナーで発表。原稿の締め切りが1つ、査読も1本あった。とりあえず、この辺りが終われば一区切りの気もするが、そうすると残り4ヶ月。
 下り坂を走るように慣性のままに走っているので、もう少し自分で制御している感覚が欲しい。体幹を鍛え筋トレするか。研究の場合、それに相当するのは日々の勉強か。
 

水曜日, 11月 02, 2016

イベントの秋

 ブルーミントンは紅葉まっさかり。秋はイベントが盛りだくさんで、りんご狩りにコーンメイズ。先週末から今週の月曜にかけてはハロウィンがあり、教会やショッピングセンターでは、「トリック・オア・トリート」の声が響いていた。
 我が家でも、かぼちゃに扮した鴻志を連れて教会のハロウィン・イベントに行って来た。ボランティアの人たちが、車のトランクにお菓子をたくさん詰めて教会の駐車場に来てくれて、そこへ仮装した子供たちがやって来て、「トリック・オア・トリート」と言って、お菓子を1つずつもらって行く。ブルーミントンではこれを「トランク・オア・トリート」と言うらしい。
 一方、大学は連日あちこちでセミナーがあり、さすがに全部は無理なので、出れるものだけ参加している。この活気と多様性がIUの素晴らしいところ。やはり大学はこうでなくっちゃ。
 バタバタとあっという間にブルーミントンの秋は過ぎて行く。

金曜日, 10月 21, 2016

りんご狩り

先週末、MooresvilleにあるAnderson Orchard(りんご園)に行って来た。たくさんの家族連れが訪れていて、とても賑わっていた。
 中ぐらいの袋満杯につめると(小さいりんご25個程度)10ドル。入り口付近の木は、ほぼ狩り尽くされていたが、少し奥の方に行くと、手が届く高さにりんごがどっさりなっていた。種類も豊富で7種類以上はあっただろうか。2個食べるとさすがにお腹がいっぱいなる。家族で食べきれる分だけとって袋に入れた。
 売店もあって、アップルパイやジャム、アップルサイダーなどが売っている。アップルサイダーといっても炭酸ではなく、いわゆるアップルジュースのこと。この季節の名物らしい。アップルパイのアイスクリーム添えも美味。
 りんごといえば福島県の名産で、小学生の頃、家族で福島市の方へ行き、道端で地元の人たちが売っているもぎたてりんごを買って食べたことを思い出す。蜜が入っていてとてもおいしかった。鴻志にも覚えていてほしいが、まだ1歳では覚えていないのだろうな。

火曜日, 10月 11, 2016

モラルとツイート

 国際会議の論文を1つ投稿した。今回のテーマは道徳(モラル)。道徳は社会心理学のホットトピックで、いろんな理論や実験が行われている。
 道徳理論の中でもとりわけ有名なのが、ジョナサン・ハイトの道徳基盤理論。提出した論文では、この理論をベースにして、ツイートから道徳基盤を計測し、道徳基盤どうしの関係性やトピックとの関連性について調べた。
R. Kaur and K. Sasahara: Quantifying moral foundations from various topics on Twitter conversations
まだまだ暗中模索ではあるが、面白いところに目をつけたと思う。共同研究者のRishemjitがとても優秀なので、予想していた以上にスムーズに論文がまとまった。それでも、まだまだ不十分なところがあるので、投稿論文にする時にはまだまだやらなくてはいけないことがある。
 とりあえずは無事受理されることを祈る。

水曜日, 10月 05, 2016

UCLA2016

 3年ぶりぐらいでUCLAにやって来た。今回の目的は、途中になってしまっていたデータ分析に関して議論をすること。初日は主にChuckとよもやま話もしつつ議論をして、2日目はRichardとYI-JUとたっぷり議論をした。Richardのプレイバック実験はとても面白いので、いい論文になるだろう。
 ずっと計算社会科学の研究をしていたので(ちょうど今朝、モラル関係のプロシーディングをほぼ完成させたばかり)、久しぶりに生態学の話を聞くとまたフィールドワークに出かけたくなった。だが、今回は議論が目的なので、フィールドワークはお預け。
 LAに着いてもあまり久しぶりな感じはしなかったが、UCLAの建物は随分と変わっていた。工学部の建物が新しくなったり、UCLAストアの近くに新しい会議施設ができたり、ティバートン近くの入り口にはメディカルスクールの新しい建物が建設中だった。
 UCLA(Under construction like always)は変わり続ける。

木曜日, 9月 29, 2016

ガス抜きの秋

 木々の葉っぱも色づき、ブルーミントンは秋を迎えた。朝晩はだいぶ冷えるようになったものの、日中はカラッとしていて風が心地よい。
 こちらに来た頃は寝ん子ちゃんでハイハイもままならなかった我が子も、遅まきながらつかまり立ちが出来るようになり、日に日に活発になって来た。最近は体力を持て余し気味でずっと家にこもっていると、エネルギーが有り余ってしまって、キーキー叫ぶ。食欲も大人勝りで、好き嫌いもなく何でも食べる。特に、イチゴが大好きだ。
 読書の秋、食欲の秋、そして鴻志を外へ連れ出してガス抜きの秋である。
 

木曜日, 9月 15, 2016

Bタウン到着

 一時帰国を終え、昨夜、ブルーミントンに無事帰ってきた。Covenanterの自宅に戻ってくるとホッとするので、「帰ってきた」という表現がしっくりする。
 デトロイト便では、鴻志がとにかく寝なくて暴れて大変だった。帰省中につかまり立ちができるようになり、立つことが楽しいのか席でじっとしてくれない。そして眠いのに眠れないので奇声を発して止まない。後方のスペースに連れて行ってガス抜きさせるが一向に効果なし。周りの席の人には迷惑をかけてしまった。
 子供連れで飛行機に乗る場合は、「子供うるさくするかもしれませんが、すみません。」と一言謝っておくと違うと何かで読んだが、これまで乗り物で暴れたことがないからと、すっかりそのことを忘れていた。
 今は寝室でぐっすりと寝ている。大人でもしんどい長旅なのだから、1歳の子供にはさぞかししんどかっただろう。
 今日は一日休暇をとって、明日から復活する。輪読会やセミナーのメールがバンバン飛んでいて、早くこの輪に加わりたい。IUでの研究も後半戦だ。

月曜日, 9月 12, 2016

共同研究

 今は直接指導している学生はいないが、3人の学生と共同で研究を進めている。一人は僕が参加しているプロジェクトの先生の大学院生で、ある辞書の翻訳作業を一緒にやっている。もう一人は知人のゼミの学部生で、この翻訳作業に使うプログラムを開発している。僕の研究を手伝いながら学びたいということだったので、基本的なプログラムを書いてもらっていて、なかなか筋がいい。もう一人は昨年度アルバイトをしてくれていた留学生で、今はインドに帰国して博士課程に通っている。引き続きデータ解析をしてもらっていて、今度、国際会議に共著で論文を出す予定だ。彼女は本当に勤勉で優秀だ。
 みんな打ち合わせで方針を決めたら、それに基づいてしっかりと作業してくれるので、知見を積み重ねられる。そして、彼ら彼女らが楽しんで取り組んでいることがわかるので、一緒に研究していて楽しい。「面白そう」、その一言だけで突き進める。これが大事。(言われたことを適当にやるとか、言われてもやらないとか、そういう学生を指導するのはもう懲りごり)。まだ研究の種を蒔いている段階だが、きっと芽が出ると思う。

水曜日, 9月 07, 2016

一時帰国

 しばしブルーミントンを離れて日本にいる。インディアナポリスからデトロイト乗り継ぎで中部国際空港へ。この場合、デルタ航空を利用するのが断然便利。機内食もおいしいし。
 一時帰国の間にいくつか研究打ち合わせをし、共同研究のデータ解析に集中的に取り組む。これで行けそうというアイデアが出たのが最近なので、いい結果が出るといいのだが。
 来週にはブルーミントンに戻って在外研究の後半に突入する。悔いが残らないよう一日1日を過ごしたい。
 
 
 

木曜日, 9月 01, 2016

シカゴ

Wills Towerのスカイデッキ
先週末、家族でシカゴに行ってきた。ブルーミントンからだと車で約4時間。ダウンタウンの外れのホテルを予約したので駐車場代はタダだと思っていたら、一晩で60ドルと言われて、別の駐車場を探して駐めた。それでも一晩30ドル。
 急な思いつきでシカゴに来てしまったので、どこに行こうという当てもなかったが、とりあえず有名なNavy PierWillis Towerのスカイデッキに行ってきた。土曜の混雑はものすごかった。夜にボートでシカゴ川を遊覧するツアーに参加した。高層ビルが昼間とは違った表情をしていてなかなか良かった。
 シカゴは美術館や博物館はもちろん、芸術的な高層ビルが立ち並ぶ大都会。野球観戦などもしたかったが、トッドラーを連れての旅行では行く場所が限られてしまう。もう少し鴻志が大きくなったらまた来よう。

火曜日, 8月 23, 2016

前半戦

  すっかり日が落ちるのが早くなり、夜はだいぶ冷えるようになった。あんなにピカピカ光っていた蛍ももういない。ブルーミントンの夏とさよならかと思うと寂しい。
 こちらは今日から授業が本格的に始まったので、Informatics Eastの建物は学生と若さが溢れていて、夏休みあんなに静かだったのが遠い過去のようの思える。
  大学が始まってうれしいことは、バスの本数が増えて便利になることと、セミナーが増えるのでいろんな話が聞けること。人気のない居室で一人黙々とプログラムを組むのもいいが、ほどほどに忙しくしていないと僕の場合効率が上がらない。さて、明後日はF ilたちと議論をして前半の締めくくり。
  2度目の手足口病の後、少し鴻志の夜泣きが治まってきて、夜の虫たちの声が落ち着いて聞こえるようになった。

水曜日, 8月 10, 2016

二人のスミス

 IUのCognitive Scienceには面白い先生がたくさんいる。中でも僕が会った二人のスミスはとても印象的だ。ちなみにどちらもDistinguished Professor(卓越した成果を上げた教授に与えられる称号)。
 一人目はLinda Smith。力学系の視点からの発達研究が世界的に有名で、理研時代に彼女が書いた「A Dynamic Systems Approach to the Development of Cognition and Action」という本の輪読会をした。IUに行ったらまず会いたいなと思ったぐらい好きな研究者だ。何度もメールを送ったがなかなか返事をもらえず、知り合いに掛け合ってもらってようやく会うことができた。穏やかな人柄を勝手に想像していたが、いかにもできる研究者という感じで、立って仕事をしている様子にはびっくりした。気難しそうな感じがしたが、話していて嫌な感じはしなかった(ただ、あまり僕に興味がないのだなと思った)。
 もう一人はEliot Smith。共同研究者のIさんから聞いてその名前を初めて知ったので、会う前はどういう方かよく知らなかったが、ホームページに書かれた研究内容が興味深かったのでコンタクトしてみた。すると快く会ってくれて、こちらは穏やかながら威厳のある教授らしい先生だった。集合感情とグループベース感情の違いなど教えてくれて、いろいろ議論をすることができた。ぜひまたお会いして議論したい。

日曜日, 8月 07, 2016

お魚

 まもなく秋学期が始まるため続々と学生が戻ってきて、ブルーミントンがまた賑やかになってきた。新入生たちが新生活を始めるために、勉強机やソファーがスーパーで山積みされていて飛ぶように売れている。2、3週間前はIUを離れる人たちが捨てた勉強机やソファーがゴミ捨て場に山積みされていたので、もったいないと思ってしまうが。「経済」の2文字が頭をちらつく。
 ブルーミントンは田舎町とはいえ、大学街なのでほぼすべてのものが不自由なく手に入る。ただし「新鮮な魚」を除いて。普段家で食べることがあるとすれば、冷凍のサーモンだ。冷凍のサーモンですら料理してもパサパサであまりおいしくない。一度だけ、刺身クオリティだと店員から教えられた冷凍マグロを買って海鮮丼にしたが、臭みがあって食べられたもんじゃなかった。事情はインディアナポリスでも似たようなものだという。新鮮な魚は一時帰国の楽しみにとっておこう。
 新鮮な魚が食べられないのと、健康維持の目的も兼ねて、Fish Oilのサプリは毎日とるようにしている。この習慣が合っているのか、Fish Oilを飲み始めてからあまり体調を崩さなくなった。

水曜日, 7月 27, 2016

2/3

 このところの暑さのせいかあるいはそれとは無関係に発達のせいか、子どもが夜中に頻繁に起きて泣くので、なかなかまとまった睡眠が取れない。新生児の頃と違って、麦茶を飲ませると大体はすぐに寝るのだが。早朝に目をさますと頭が冴えてしまって、結果的に朝活をすることになる。それはそれでよいのだが。
 こちらに来てから間もなく4カ月が過ぎる。ということは、残された時間はあと2/3。1年というのはほんとにあっという間だ。早めに研究テーマが決まったのは良かったが、今は暗中模索の毎日。何がこの問題の本質だろうと考えている最中にも、同僚からこんな関連研究があった、あんな類似研究があったと情報がやってくる。それを気にしながら研究を進めなくてはならない。
 耳をすますと、夜明けがまちどうしい鳥たちがさえずり始めた。そして、鴻志も泣き始めた...。また1日が始まる。

金曜日, 7月 15, 2016

あー夏休み

情報学棟の隣の隣にあるケリービジネス
スクールの建物。外も中もものすごく豪華。
 大学はまだ夏休み中だが、FilとSandroは1ヶ月のバケーションを終えて、こんがり焼けてすっかりリフレッシュして帰ってきた。そして、帰って来てそうそう学生との議論や来客対応やSkypeミーティングなど、フルスロットルで仕事に取りかかっている。このONとOFFの切り替えは見事としか言いようがない。見習いたいものだ。
 日本では、教授が1ヶ月もラボを留守にして休暇をするなど(制度的にではなく)実質的に無理だ。昨今は雑務に追われて研究する時間を確保するもの一苦労。Filたちが大学の先生らしい生活ができるのは、大きな研究資金を安定して獲得し、有能な秘書と研究員と大学院生を雇い続け、彼ら彼女らがしっかりと働いてくれるからという事情もある。もちろん、しっかり彼ら彼女らをマネジメントして研究業績を上げて次の研究資金獲得へつなげる、というループをキープできている優秀な研究者だからに他ならない。
 今週から有志の論文読み会が始まり、来週はFilたちとの議論がある。学生に戻ったような忙しさで発表資料を準備している。あれやこれや広げた研究も少しずつだが進んでいる。こちらに来て4ヶ月目に突入したので、そろそろコレっという研究結果を出したい。

木曜日, 7月 07, 2016

2nd IC2S2

 今年も計算社会科学の国際会議IC2S2に参加してきた。去年があまりにも良すぎたので、今年は見劣りする感じがしたが、初めて参加した人に感想を聞くとそうでもないようなので、やはり内容は良かったのだろう。(学会の運営サイドのホスピタリティをあまり感じなかったのが、そう思う大きな理由の1つだ)
 会場となったノースウェスタン大学はシカゴ郊外にある名門私立大学で、特にケロッグ経営大学院は全米で1,2を争うぐらいの優秀な学校。どちらかという社会科学のイメージが強いが、近々、巨額の資金を投じてコンピュータサイエンス学部を新設するそうで、学会でもその宣伝をしていた。これから計算社会科学の拠点の1つになりそうな大学だ。
 学会中、ノースウェスタン大学で院生をしている何人かの日本人と話をすることができた。話していて、彼らの自信とプライドがものすごく感じられた。トップスクールの奨学金を勝ち取り、いつかは自分でビッグ・プロジェクトやってやろうとギラギラして研究に邁進しているわけだから、それも頷ける。その勢いのまま突き進んで欲しいと心から思う。教員になってから、こういう才能とやる気が溢れる学生に一度も出会うことができなかったので、実に羨ましい。
 次回の開催地はまだ未定だが、間違いなく来年の会議も参加するだろう。

日曜日, 6月 19, 2016

ちびっこモンスターと夜のゴミ捨て

 昼間は一人遊びができるようになり、機嫌よくしているうちの子だが、夕方から夜はちびっこモンスターである。
 先々週までは、風呂から上がって寝かしつけるのが一苦労で、散々泣いて暴れて1時間ぐらい格闘した末にようやく寝る。妻はヘトヘトだ。ちなみに私はまったくの役立たずで、夜に私が抱っこすると泣き出す。昼間は一緒に遊んでいるのに...orz。
 先週からは特に夜泣きがひどくて、夜12時に一度目が覚めて大泣き。白湯を飲ませてオムツを替えて寝かしつけようとすると、「寝ない!」と反り返って自己主張、やはり1時間ぐらい格闘する。ようやく寝ても、眠りが浅いのか、起床までに2、3度目を覚まして泣く。
 そのパターンにようやく慣れてきたら、ここ数日は妻がシャワーを浴びている時に黄昏泣きが始まった。こうなるともう手がつけられない。
 今日も妻が子どもを寝かしてつけている間、日課のゴミ捨てのため外に出る。すると、アパートの敷地や茂みにたくさんの蛍が飛んでいて、その美しさに足を止める。ささくれた心が保湿される瞬間だ。ブルーミントンを去る時、きっとこの蛍を思い出すだろう。

火曜日, 6月 14, 2016

金持ちの留学生

 僕が住んでいるアパートは2.5バスルーム、2ベットルームで家賃が1,010ドルだ。ここに光熱費は含まれない。ブルーミントンでこの家賃は決して安くはない。なので、ルームシェアしているとはいえ、ここの学生はそれなりにお金に余裕のある人ということになる。 
 正確な数はわからないが、全体の半分ぐらいはアジア系の留学生で、中国人はもちろん、韓国人の留学生がかなり多い。そして彼ら彼女らのほとんどが新車かいい中古車を乗っている。LAで見かけたアジアの留学生と比べると、明らかに経済的に豊かそうだ。
 理由の1つは、ジェイコブズ音楽院に留学している学生が裕福だということ。芸術系で海外留学できるとなると、実家はよほどのお金持ちだろう。
 それから、インディアナ大学(IU)が州立大学だということも関係している。日本の感覚でいうと、公立の方が入学金も授業料も安いので、アメリカの私立大学にいくよりも、州立大学にいった方がお得だと。
 インディアナ州民ならばそれは合っている。高校の成績が優秀ならば、授業料も免除で奨学金もたくさんある。ところが、州立大学はあくまで州民のための大学なので、州民以外が入学するとなると授業料が倍ぐらい高くなり、一方で応募できる奨学金がほとんどない。したがって、授業料も生活費も全部自費ということになり、結果的にそれが払える裕福な外国人が来る。この事情はUCLAでも同じだが、IUは入学時の倍率はそれほどでもないので、そこそこの学力があって経済的に裕福ならば入学できる。そして、LAほど物価は高くないので、同額の仕送りでもブルーミントンならばいい暮らしができる。
 すば抜けて優秀な高校生は、奨学金が潤沢にあるMITやHarvardの方がかえって留学がしやすい、ということらしい。

水曜日, 6月 01, 2016

テイスト・オブ・シンシナティー

テイスト・オブ・シンシナティー
メモリアルデーの祝日に、家族でシンシナティーのフードフェスティバル「Taste of Cincinnati」に行ってきた。ブルーミントンからシンシナティーまでは、車で約2時間半。
 5th Streetにいろいろな食物の出店が出ていて、炎天下にもかかわらずたくさんの人が来ていて賑やかだった。出店でジャンバラヤとリブを買って昼食にした。5th Streetには高層ビルや高級ホテルなどが立ち並び、さずがにシンシナティーのダウンタウンは都会だ。
 シンシナティーにはIKEAがあるので、ダウンダウンから20分ほど車を飛ばして行ってきた。LAにいた時はバーバンクのIKEAに2度、バスと電車を乗り継いで山のように買い物をして、鬼の形相で荷物をアパートまで持ち帰った思い出がある。(あの頃は若かった...)さっと雑貨などを見て、帰ることにした。
 その帰り道である。シンシナティーとブルーミントンのちょうど中間あたりで、車を運転していて妙な違和感を感じた。ガソリンスタンドに車を止めて確認したところ、右の前輪に太いネジが刺さって空気漏れていた(図2)。幸い、近くにホテルがあったので、フロントの人に事情を説明してロビーで待たせてもらい、AAAに連絡して修理の人が来るのをまった。2時間ほどで修理の人が来て、スペアタイアを取り付けてくれた。あと5分車を走らせていたら、人気のない田舎道だった。不幸中の幸いとはこのことをいう。
 文字通りメモリアルデーになった。

プリウスの前輪に突き刺さっていたネジ

木曜日, 5月 26, 2016

何者でもない

 留学というのはとにかくお金がかかる。航空チケットが約30万、保険だけで約70万(これがないと、そもそもVISAがとれない)、段ボール9箱の荷物を送って約15万、そして、生活に必要なものを買い揃えて約20万。車と自動車保険とAAAにも入ったので約70万。その他もろもろに加え、このドル高。
 非常勤講師をやって準備したお金は使い果たした。大学からのサポートがあるものの、旅費と同じ扱いなので出るのは当分先。月々の給料でやりくりするしかない。
 そこまでカツカツになっても留学するのはなぜか。日本の方がはるかに便利だし、物質的な環境だけ見れば、日本の大学の方がはるかに恵まれている(特に名大は)。それでも、ここに来たかったのは「経験」のためである。
 ここCNetSでは私は何者でもない。FilやSandroとは国際会議で以前一度会っただけで、ほとんど面識もないままCVや研究計画などを送って、留学の許可を得た。共通の知り合いもいないので、色眼鏡で見られることもお客さん扱いされることもない。彼らの信頼を勝ち取って一端の研究者と認めてもらうためには、自分の研究に語らせるしかない。それができなけば、10時にラボにきて17時に帰るただの有機体である。
 なので、昨日のミーティングには万全の準備をして臨んだ。関連研究を2つレビューし、それらの結果を再現して見せ、さらに自分のモデルを紹介してシミュレーション結果を紹介した。その時のFilの言葉が、「明日もう一度議論したい。11時半でいいかな。」だ。
 この経験のためにここに来た。

木曜日, 5月 19, 2016

四〇

 四〇歳になった。二十歳の時は、こんな日は永遠に来ないんじゃないかと思っていたけど、倍になった。皆平等に歳をとる。
 二十歳までの20年間は長かったけど、二十歳からの20年間はあれよあれよと言う間に過ぎていった。28で大学院を卒業し、名大に職を得たのが36。今、ようやく研究らしい研究ができるようになった。そして気がつくと、退官までにあと20年とちょっと。
 いろいろ回り道をしすぎた気もするけど、それだからこその今の自分である。こんな曲がりくねって途切れそうな道を好んで歩いてきたのだから、これからも行けるだろう。生き急ぐこともあるまい。
 鳥たちがさえずる、ブルーミントンの朝に思う。
 

月曜日, 5月 16, 2016

自転車盗難

 I had my bicycle stolen. (自転車を盗まれました。)これは英語の授業でよく習う文章だが、本当にこの通りになってしまった。
 先週の月曜、やや早めに帰宅し、バイクスタンドに鍵で括り付けられた自分の自転車があることを確認してから床屋に出かけた。さっぱりして家に戻ったら、バイクスタンドに自転車がない。盗まれれたのだと気付いたのはしばらくたってからだった。こんな長閑な田舎町で盗難に遭うなんて予想していなかったので。
 そういえばここ数日は引越しのピークで、出て行く人も入ってくる人も多く、アパートには頻繁に大きな車が出入りしていた。鍵を壊して自転車を持っていたのだろう。とほほ。
 海外旅行保険に電話したら、全額ではないものの保証してくれそうなので、それはよかった。警察届出を出したり、いろいろ手続きは煩雑だけど、人生勉強と思ってやるしかない。
 悪いことは起こるものだが、不幸中の幸いだった。
 

金曜日, 5月 06, 2016

黄金週間

 日本はゴールデンウィークからちょうど日常に戻った頃だろう。こちらは連休などなく、いつも通り仕事モード。
 論文の査読を2つ引き受けていたところに、別の論文の再査読依頼が来たりして、多くの時間をそれらにさくことになり本末転倒なことに。どれもそれなりに内容が良かったので、勉強になったのは救いだけど。
 期末試験期間が終わり、CNetSの院生たちは今週末からみんなインターンに行くようだ。ある人はGoogle、ある人はFacebook、ある人はLinkedIn。日本と違ってデータ科学の知識や技術をそのまま生かせる企業が米国にはあるので、学位を取っても大学に残って研究員になる人はむしろ少ない。企業の方がデータも資金も潤沢なので、大学よりも良い環境かもしれない。
 学生たちが出払い、教授陣が一息つき(Filはいつも忙しそうだが)、静かになったラボで、僕は研究をコツコツ進めることにしよう。ラボにいる時だけは教員であることも、博士であることも、父であることも忘れて研究に没頭しよう。そのためにここに来たのだから。

火曜日, 4月 26, 2016

So what?

 今日はFilとSandoroとミーティングをした。これからある研究を始めるにあたって、先行研究と文献を調べて現状を報告し、今後の方針を話し合った。といっても、途中からFilとSandoroのやり取りがヒートアップして、ようやく最後に自分のアイデアを披露するというあべこべな順番になってしまった。
 まだ共通の土台がない状態での議論なので、とにかく相手の主張を理解するのに必死になっていたら、遠慮せずに会話に入ってこいと言われて苦笑い。ここでは、お行儀よく聞いていることは議論に参加していることならず、空気も同然なのだ。
 まだ煮詰まっていない思いつきのアイデアを披露したら、久しぶりに「So what(だから何)」系のコメントを食らって、また苦笑い。ChuckやOferのところにいた頃を思い出した。「もちろんわかっているさ!」
 まもなく40になるおっさんだが、学生に戻った気分で日々を過ごしている。熱く議論ができる環境はよい。

木曜日, 4月 14, 2016

多様性の森

 ブルーミントンでの生活にも次第に慣れてきた。LAでの経験があるのでいろいろ勝手がわかるというのもあるが、GoogleとAmazonとiPhoneおかげで、格段に生活が便利になったという実感がある。手続きはネットで済むし、何でもネットで買える。
 晴れた日は自転車で大学に行く(だいたい20分ぐらい)。裏道を通ってキャンパスに行き、ジェイコブズ音楽院(全米屈指の音楽学校)と広いグランドを通り抜け、メモリアルユニオンのPeet's Coffeeでコーヒーを買ってから研究室に行く。
 先日、アシスタントリサーチャーのGiovanniに研究室のメンバーを紹介してもらった。所長のFilをはじめ多くが学会で出払っていて、全員には会えなかったが、院生もポスドクも個性豊かな人が集まっていた。特に中国からの留学生がとても優秀で、がつがつコーディングしていた。「多様性の森」という比喩がぴったりな場所だ。
 明日のミーティングは自己紹介を兼ねた簡単な発表。来週月曜はFilと議論、そして月末に研究発表。今日からセミナーにも参加し始めた。思いっきり研究するぞ。

水曜日, 4月 06, 2016

ブルーミントン

 この4月から1年間、インディアナ大学ブルーミントン校に客員研究員として滞在します。4/1夜にインディアナに着き、翌日、ブルーミントンのアパートに引っ越し。そこから連日、生活に必要な一切合切を近所のショッピングモールとスーパーで買いそろえ、今日、こうしてインターネットも開通し、何とか通常生活ができる状況になってきました。
 先日は、僕がお世話になる研究所(CNetS)に家族であいさつに行きました。所長のFilをはじめ、みなさん感じの良い方達でした。CNetSは小さな建物の3階にあり、規模は小さいですが、アクティビティは非常に高そうです。4/8のオリエンテーションが終われば、いよいよこちらでの研究が始まります。

IUの正門
CNetSがあるのは手前の建物
3階がCNetSの場所


月曜日, 3月 21, 2016

オープンレクチャー2016

 名大のオープンレクチャーで講師を務めた。大学教員にとってはアウトリーチの活動の一環で、一般の方にとっては大学の講義を聴講できるチャンス。こういうイベントはとてもいいと思う。僕が聴講したいぐらいのおもしろそうな講義がいくつもあった。
 どのぐらいの人数が集まるのだろうと、全体説明の会場を覗いてみたら、高校生を中心としてほぼ満員御礼。祝日にわざわざ大学まで来て講義を聞こうというわけだから、参加者はとても勉強熱心だ。理系の名大ということもあり、素粒子やプラズマの話はとても人気があるようだった。
 僕はというと、「Twitterで読み解く人間行動のはなし」と題して、できるだけわかりやすく計算社会科学の話をした。45名の申込みがあって、実際に来たのは35名程度。しかし、講義の参加者は熱心に話を聞いてくれ、講師を務めた甲斐があった。高校生がほとんどだったが、中にはご年配の方もおられた。今日の講義が少しでも刺激になったらいいな。
 

日曜日, 3月 13, 2016

3月

 ここ数年、3月は査読に追われている気がする。今年も国際会議の論文やアブストラクトの査読が11本、ジャーナルが1本。必ずしも自分の得意な内容ばかりではないので四苦八苦するが、これまた勉強である。極力ポジティブに評価し、どこを直せば内容が改善されるかをコメントするようにしている。それにしてもこの量である。
 研究者にとって、学会発表や論文出版の機会は昔に比べれば格段に増えたに違いない。論文を年に10本出版する研究者はざらにいるし、しょっちゅう国際会議で世界中を飛び回っている研究者もいる。しかし、その中に本当に世に送り出す価値のある研究はどのぐらいあるのだろう。「出せば官軍」というわけでもないだろう。
 「これは負け惜しみでない」と言い切れるぐらい、いい研究をしなければ。
 

土曜日, 3月 05, 2016

異分野交流

 先週末は計算社会科学のワークショップ、今週は総合コミュニケーション学の研究会に参加した。
 前者の研究会は、日本でもこれから計算社会科学(CSS)を盛り上げていこうというもので、Dirk Helbingの招待公演に引き続き、物理学、社会学、経済学、情報学から中堅および若手の研究者が研究発表を行った。計算社会科学の意味するものが研究者によって異なるし、そもそもちゃんとした定義などないので、「計算」と「社会」に関係のありそうな話題をそれぞれ提供した、という感じだった。 僕は「ソーシャルセンサー」を中心テーマとして、複雑系としての性質と社会現象への応用という感じでまとめた。発表や質疑応答を聞いていて、やはりこの分野は若手が面白い。
 後者の研究会は、名大の時田さんが代表を務めるプロジェクトで、僕もメンバーとして参加している。今回は発表がなかったので、心置きなく聴講できた。有田さんや池上さんも発表もあって、いろいろ研究のヒントをもらった気がした。その他にも、環境社会学のフィールド調査やゲーム理論による荒らしの分析など、普段聞けない話があって面白かった。
 異分野交流型の研究会は「気付き」に満ちていて楽しい。

金曜日, 2月 26, 2016

デジタルペーパー

 ソニーのデジタルペーパーを購入した。前から欲しいと思っていたのだが、新しいモデルが出るのではなかと思って躊躇していた。値段もiPadより高いし。それから、MicrosoftのSurface Pro4も完成度が高くて、オプションのペンを使うとデジタルペーパーのように使うこともできる。
 どちらを買おうか迷った末、PDF(主に論文)の読み書き用と割り切って、デジタルペーパーを買うことにした。 決め手はEinkの美しさと書き心地。紙とほぼ同じ感覚でPDFを読んだり、PDFに書き込んだりできるのは、研究者の文房具としては魅力的。バッテリーも長持ちするので、学会やセミナーのメモを取ったり、普段の勉強ノートを全部これで置き換えても十分使えそう。
 ペーパーレス時代がいよいよくるか。もう少し安いとさらにいいのだが。

水曜日, 2月 17, 2016

モーニングコーヒー

 子どもの夜泣きで目が覚めて、あやして寝かしつけていたら目が冴えてしまったので、モーニングコーヒーを飲みながら考えごとをしている。
 間もなく2015年度が終わる。指導した学生の修論発表が終わり、無事卒業できそうなので、まずはほっとした。今思うと、もっと別の指導方法があったのではないかとも思うが、学生の性分によるところも大きいので何とも言えない。
 一般論として、意識の高い学生であれば、学会に参加させたり論文を紹介したりすれば、自分で楽しさを見つけて研究に夢中になるので何の問題もない。しかし現状では、そういう大学院生ばかりではなく、そうでない学生に対しては、こちらが良い加減で背中を押してあげる必要がある(これは身に染みて感じた)。
 一方で、意識の高い(「意識高い系」ではなく)学生が志望したくなるような状態を作る努力もしなければならないだろう。退官記念講演で恩師は、研究室の立ち上げ当初、なかなか良い学生が集まらずに苦労したという話をしていた。そこでまずやったことは、「本を書いて名前を売る」ということだったそうだ。確かに、教科書はもちろん、ブルーバックスやその他の一般書で先生の名前を知っていたことが、研究室を志望するきっかけになった。もちろん、先生の人柄に惹かれたことも理由の1つ。
 とすると、「本を書く」というのは一つの手かもしれない。思想地図βの原稿を書いて以来失せていた「執筆熱」がまた高まりだしたので、勉強も兼ねて一冊書いてみるか。
 外はすっかり明るくなった。

金曜日, 2月 12, 2016

卒業発表

 情報文化学部(自然情報学科)の卒業発表に参加した。理学部や工学部にはない分野融合的なカリキュラムを学んだ情文の学生たちが、どんな研究をするのかが楽しみだった。
 先生にテーマをもらって取り組んだり、先輩からテーマを引き継いだ学生もいれば、自分でテーマを見つけた意欲的な学生もいた。どの発表もよくまとまっていたと思う。中には、修士論文の発表よりレベルが高いものもあって、今後が楽しみなものもあった。研究室のカラーも出ていて、それも面白かった。
 僕は大学院の所属なので、今のところは学部教育には関わっておらず、学部生とは接点がない。新学部で教育の機会が与えられたならば、講義でやってみたいことは山ほどある。そして、教え子の中から、一緒に研究してくれる優秀な学生が出てくるといいなぁ。

木曜日, 2月 04, 2016

シンギュラリティー

 人工知能が人間を超える日がそう遠くない未来に訪れる。それがシンギュラリティーと呼ばれているものである。5年前なら「またまたご冗談を」ですますところだが、自動運転がかなり現実味を帯び、コンピューターが囲碁で人間に勝つ今日この頃では、あながち嘘ではないのかも、と思ったりする。  
 この本の中で「全脳エミュレーション」が紹介されていた。それは、人間の脳を高い精度で計測してコンピュータにマッピングし、外部環境との接続の中でシミュレーションを行うというものだった。先日、たまたま参加したセミナーで、脳のカルシウムイメージングの話を聞いたのだが、その技術が驚くべき速さで進歩していて、このマッピング作業は決して不可能ではないところまで来ているという印象を受けた。自分が理研脳センターにいた頃は、ようやく複数のニューロンから電機信号がとれるようになった頃で、生きたままの脳を丸ごと測ることなど夢のまた夢だった。  
 全脳エミュレーションができたからといって、直ちにコンピュータに意識が宿り、コンピュータが我が物顔で街を闊歩する日が来るとは思わないが、人間とコンピュータとの付き合い方は大きく様変わりするだろう。我々の情報摂取の仕方も。
 この本は楽観論でも悲観論でもなく、バランスよく書けた良書である。

火曜日, 1月 26, 2016

ヘテロ

 最近、自分と研究の嗜好が近い"異なる分野"の"若い"研究者に積極的にコンタクトをとっている。中にはまったく面識もなく、著書や論文を読んで知っているというだけの方もいるが、「ぜひ研究の話をうかがいたい」とお願いすると、みなさん快くOKしてくれる。その道の専門家であり一番脂が乗っている若い研究者と話をするのは本当に楽しいし、刺激になる。
 計算社会科学は一人でどうにかできるような分野ではなく、社会学、心理学、経済学、人工知能、人工生命、物理学、ネットワーク科学など、異なる分野のプロたちが協働・共創できるか否かが鍵だと思う。さもなければ、「船頭多くして船山に登る」になってしまう。ヘテロな環境で生き延びてきた経験を生かしたい。

金曜日, 1月 15, 2016

ヒトの本性

 川合さんに献本いただいた本を読んだ。「人間とは何か、心とは何か。」これらの問いに「比較」というアプローチで迫るのが比較認知科学。チンパンジーやサルなどヒトに近い動物の行動特性を観察・実験し、ヒトと似ているところや違うところを明らかにすることで、ヒトの認知固有の生物基盤の解明や進化過程の推測が可能になる。
 たくさんの先行研究があるので、ややもするとこの手の本は研究結果の羅列になりがちなのだが、本書はストーリーがしっかりしているので、わかりやすく面白い。「いじめ」には、モラルや教育云々以前に、生物基盤や進化が深く関係していることが分かれば、この問題の改善につながる妙策も見つかるかもしれない。新書のお手本のような本である。

土曜日, 1月 09, 2016

夢の中か「雲」の中

 非常勤の最終講義を終えた。期末試験の監督と採点が残ってはいるが。今年度は、月曜日1限から3コマ連続だったので体力的にはしんどかったが、昨年度作った資料を少し修正すれば使えたので、その意味では楽だった。
 ただ、学生がちゃんと取り組まないことを前提にして、講義しなければならないのは大変に辛いことであった。「この演習に取り組んで下さい」と指示しても、何もやらないか、スマホをいじっている学生が多数。抜け殻の体だけが教室にあって、魂は夢の中か「雲」の中。100人超の学生をいちいち注意して回るわけにもいかないし、抜け殻にどう話せばよいのやら。
 それでも、議論の場面で目の覚めるような回答をする学生や、授業後に質問に来て、「わかりました。ありがとうございました。」と嬉しそうに帰っていく学生がたまにいて、これだから先生はやめられないとも思う。
 2年間だけど、良い経験をさせてもらった。今後、名大の教育に活かせることもあるだろう。

水曜日, 1月 06, 2016

みてね

 明けましておめでとうございます。
 新しい家族が加わって8ヶ月が過ぎました。子どもの写真や動画を共有するのに「Carousel」を使っていましたが、この3月でサービスが終了ということで、最近「みてね」というサービスを使い始めました。これがなかなかいいサービスで、夫婦や親戚同士で共有するのに特化しているのでシンプルで使いやすく、1秒動画がまた良い。ソーシャルなサービスにはまだまだニッチがあるのだなと。
 それから、NHKがプロフェッショナルの流儀風の動画を作成するアプリを公開して、Twitterで話題になっていたので、ちょっと作ってみました。[これ] 後々、子どもに怒られそうな気もしますが...。
 2016年も研究と父親業を楽しみながらがんばろうと思います。今年もよろしくお願いします。