木曜日, 5月 26, 2016

何者でもない

 留学というのはとにかくお金がかかる。航空チケットが約30万、保険だけで約70万(これがないと、そもそもVISAがとれない)、段ボール9箱の荷物を送って約15万、そして、生活に必要なものを買い揃えて約20万。車と自動車保険とAAAにも入ったので約70万。その他もろもろに加え、このドル高。
 非常勤講師をやって準備したお金は使い果たした。大学からのサポートがあるものの、旅費と同じ扱いなので出るのは当分先。月々の給料でやりくりするしかない。
 そこまでカツカツになっても留学するのはなぜか。日本の方がはるかに便利だし、物質的な環境だけ見れば、日本の大学の方がはるかに恵まれている(特に名大は)。それでも、ここに来たかったのは「経験」のためである。
 ここCNetSでは私は何者でもない。FilやSandroとは国際会議で以前一度会っただけで、ほとんど面識もないままCVや研究計画などを送って、留学の許可を得た。共通の知り合いもいないので、色眼鏡で見られることもお客さん扱いされることもない。彼らの信頼を勝ち取って一端の研究者と認めてもらうためには、自分の研究に語らせるしかない。それができなけば、10時にラボにきて17時に帰るただの有機体である。
 なので、昨日のミーティングには万全の準備をして臨んだ。関連研究を2つレビューし、それらの結果を再現して見せ、さらに自分のモデルを紹介してシミュレーション結果を紹介した。その時のFilの言葉が、「明日もう一度議論したい。11時半でいいかな。」だ。
 この経験のためにここに来た。

木曜日, 5月 19, 2016

四〇

 四〇歳になった。二十歳の時は、こんな日は永遠に来ないんじゃないかと思っていたけど、倍になった。皆平等に歳をとる。
 二十歳までの20年間は長かったけど、二十歳からの20年間はあれよあれよと言う間に過ぎていった。28で大学院を卒業し、名大に職を得たのが36。今、ようやく研究らしい研究ができるようになった。そして気がつくと、退官までにあと20年とちょっと。
 いろいろ回り道をしすぎた気もするけど、それだからこその今の自分である。こんな曲がりくねって途切れそうな道を好んで歩いてきたのだから、これからも行けるだろう。生き急ぐこともあるまい。
 鳥たちがさえずる、ブルーミントンの朝に思う。
 

月曜日, 5月 16, 2016

自転車盗難

 I had my bicycle stolen. (自転車を盗まれました。)これは英語の授業でよく習う文章だが、本当にこの通りになってしまった。
 先週の月曜、やや早めに帰宅し、バイクスタンドに鍵で括り付けられた自分の自転車があることを確認してから床屋に出かけた。さっぱりして家に戻ったら、バイクスタンドに自転車がない。盗まれれたのだと気付いたのはしばらくたってからだった。こんな長閑な田舎町で盗難に遭うなんて予想していなかったので。
 そういえばここ数日は引越しのピークで、出て行く人も入ってくる人も多く、アパートには頻繁に大きな車が出入りしていた。鍵を壊して自転車を持っていたのだろう。とほほ。
 海外旅行保険に電話したら、全額ではないものの保証してくれそうなので、それはよかった。警察届出を出したり、いろいろ手続きは煩雑だけど、人生勉強と思ってやるしかない。
 悪いことは起こるものだが、不幸中の幸いだった。
 

金曜日, 5月 06, 2016

黄金週間

 日本はゴールデンウィークからちょうど日常に戻った頃だろう。こちらは連休などなく、いつも通り仕事モード。
 論文の査読を2つ引き受けていたところに、別の論文の再査読依頼が来たりして、多くの時間をそれらにさくことになり本末転倒なことに。どれもそれなりに内容が良かったので、勉強になったのは救いだけど。
 期末試験期間が終わり、CNetSの院生たちは今週末からみんなインターンに行くようだ。ある人はGoogle、ある人はFacebook、ある人はLinkedIn。日本と違ってデータ科学の知識や技術をそのまま生かせる企業が米国にはあるので、学位を取っても大学に残って研究員になる人はむしろ少ない。企業の方がデータも資金も潤沢なので、大学よりも良い環境かもしれない。
 学生たちが出払い、教授陣が一息つき(Filはいつも忙しそうだが)、静かになったラボで、僕は研究をコツコツ進めることにしよう。ラボにいる時だけは教員であることも、博士であることも、父であることも忘れて研究に没頭しよう。そのためにここに来たのだから。