金曜日, 7月 31, 2009

LAの日本人研究者たち

 先週の土曜、アパートで知り合った日本人の皆さんとBBQをしました。うちを含めて5家族が参加しました。僕以外は全員お医者さんで、1年とか2年、研究をするために家族でロサンゼルスに来ているそうです。夫たちは肉とビールをほうばりながら仕事の話をし、子どもたちは楽しそうに駆け回り、妻たちも楽しくおしゃべりをしていました。強い日差しの中、肉と同じぐらい焼けた楽しい1日でした。
 BBQ後、ロス在住の日本人研究者の集まりがあるからと誘われて、Nibei財団の集会に行って来ました。月に1度講演会を開き、交流の場を提供しているそうです。この日はUCLAの学長Gene Blockが講演をするというので、大勢の人たちが詰めかけていました。Gene Blockは生物時計の世界的権威で、何と学長なのにラボを持っているそうです。多忙な学長のスケジュールをこなしつつ、最先端の研究をするなんて超人ですね。講演も面白かったです。行動から神経回路まで、いたるところに24時間の周期現象が存在するというデータを見せてくれました。光のあたらない暗闇にいると、人の生物時計は後ろにズレ、ネズミの場合は前に進むそうです。それから時差ボケに関して、脳はかなり素早く現地時間に適応するのだけど体の方がそれについていけず、脳と体のアンバランスから生じるのではないか、という仮説を唱えていました。ちなみに、学長は日本好きで、車もスカイラインに乗っていました。

金曜日, 7月 24, 2009

足下の生態系

 毎朝決まった時間にPeet'sにやって来て、紅茶とデニッシュを買って外の席に腰掛けるおじさんがいる。このおじさん、デニッシュをひとくちサイズにちぎってはテーブルの上にポイッポイッと置き、半分も食べない。しばらくすると、毎度どこからともなく1羽の黒い鳥がやってきて、テーブルの下にこぼれたデニッシュのカスをついばみ始める。着地の時に1本の足をすぐに引っ込めるので、きっと足をけがしているのだろう。この鳥は頭の回転がよろしくないらしく、テーブルの上にあるパンには全然気付かない。いつまでたってもおじさんの足下をうろうろしている。
 面白いのはここから。この黒い鳥がやってくると、それを見ていたスズメやスズメみたいな鳥たちがわんさか押し寄せて来る。そしてあっという間に餌の場所を突き止め、デニッシュを持ち運んでしまう。さずがにカチンと来たのか、黒い鳥はスズメたちの後を追いかけるが、後の祭り。一羽のスズメを追いかけている隙に、別のスズメが餌を奪って行ってしまう。最後にはハトまでやってきて、残りを平らげてしまう。一番最初に餌の情報を仕入れながら、一番損をするとは。情報の上にあぐらをかくべからず。いや、この鳥がバ○なだけか...。

火曜日, 7月 21, 2009

バジる

 3週間ぐらい前から、我が家では家庭菜園を始めた。バジル、サラダ菜、ネギ、大葉。一番最初に芽を出したのがサラダ菜とネギで、スタートダッシュがすごかった。バジルは着実に生長し、今はこんな感じ。先週から、ちゃんとバジルの香りがするようになった。間もなくピザやモッツァレラチーズの上で活躍するに違いない。
 一方、サラダ菜は最近ぐったりとして、ネギも密度が高すぎるのかうまく生長してくれない。適当に種をまけばよいというものではないらしい。かなり遅れて、ようやく4つぐらいの大葉が芽を出し始めた。しかし、遅々として生長しない。期待を込めて「遅れてきたルーキー」と呼んでいたが、名前を改めることにした。「遅れてきたうんこルーキー」。だめだこりゃ。

木曜日, 7月 16, 2009

一時帰国前に思うこと

 最近は夏の日差しが照りつけ、30度近くまで気温が上がる。しかし、湿度が極端に低いので汗はほとんどかかない。アメリカの生活も4ヶ月目、開放的な雰囲気の中で、研究も生活もエンジョイしている。
 8月に2週間ほど一時帰国するので、これを機会にこれまでやってきたことや、まだやれてないことを振り返ってみる。まず研究。4月から1ヶ月半ぐらいは、しこしこプログラム書いていた。これができてからはデータ解析がぐんと進んだ。ある程度まとめる目処がついたので、ここからが腕の見せ所。問題の切り口のおもしろさ、方法の妥当さ、結果の明瞭さ、考察の鋭さ、これらが欠如した偽物論文は書きたくない(インクと紙の無駄→CO2増→エコじゃない)。
  • Do one thing really really well (1つのことをうんと良くやる)
  • Stay true (本物でいよう)
1つ目はGoogleのポリシーで、2つ目はPeet'sのポリシー。そして、これらは僕のMotto。
 やれてないこと。1つは英語。Chuckは「カズトシノエイゴハダイジョウブ」と言ってくれるけど、研究以外になるとヘボなのでまだまだ。今年はカリフォルニアの財政難で、無料のESLのサマースクールは(ほぼ)すべてキャンセルになってしまった。秋からUCLAの国際交流館でESL上級者コースが始まるはずなので、それに行こうと思っている。自習に利用しているESL Podcastは分かりやすいのでお勧めです。やれてないことのもう1つは写真。写真の腕をあげたい。

水曜日, 7月 15, 2009

動物行動とカオス

 ウェストウッドのPeet'sでコーヒーを飲んでからラボに行くのが僕の習慣。毎日ほぼ同じ時間に来て、「コーヒーS、マフィンは要らない、レシートも要らない」という僕の台詞を覚えている店員さんがいて、いつも「Have a good day!」と気持ちくコーヒーを渡してくれる。コーヒーを飲みながら読書するこの時間が好きだ。
 先月は「動物行動学入門 (同時代ライブラリー (185))」を読み直した。1985年の本なので、内容的には古くなっている部分もあるが、動物行動学の基本がとてもしっかりと書かれている。原書も訳本も古本でのみ入手可能。
 今月の本は「水滴系のカオス」。こちらも原書は1984年と古いのだが、翻訳されたのは2006年。訳もしっかりしているし、補足やその後の進展、参考文献など、原著にはない情報が付加されている。モデルを用いて複雑な現象を理解するというやり方のとてもよいお手本。以下は、目から鱗が落ちた箇所。
「モデル」とは、対象となる系の定性的振舞いを分析するため、関連する変数全てを用いずに、少数の変数とそのダイナミクスによって系を表現したものである。
...(途中略)...
この単純なモデルは何ら予測能力をもたないが、水滴系の振舞いを一次のオーダーで近似する程度の記述力をもっている。 水道のポタポタは、ミクロの規則とは関係なく生じるマクロな現象で、少数自由度カオスの良い例となっている。そのような系の予測可能性を情報理論を用いて考察する、というのがこの本の狙いである。どちらの本も書かれたのが1980年の半ばなんだ。かたや動物行動学かたやカオス。そんな時代だったんだ。

追伸(2009.07.10):
上記のSlater本は、その後、"Essentials of animal behaviour"という名前で再出版されていました。

月曜日, 7月 13, 2009

ランチパーティー

 TaylorラボのZacとAlex、Alexのガールフレンドを招いて、ランチパーティーをしました。日本食がよいだろうということで、奥さんが腕を振るって、ちらし寿司、野菜の天ぷら、豚の角煮、サラダ、けんちん汁を作りました。これだけ大がかりなパーティーをやるのは初めてです。
 Alexたちは昼過ぎにビールとフルーツタルトを持ってやって来ました。University Apartmentに来るのは初めてだそうで、「いいところだ」と感心していました。今月から多少値上がりしたとはいえ、$1,240で2ベットルーム・1バスルームの部屋は、ロサンゼルスでは格安です。大学が管理しているので安心だし。部屋を案内すると、あまりの物の少なさに驚いていました。2つの部屋のうち、1つは寝室、もう1つは書斎で、書斎は机しかありません。しかし、僕はこのシンプルさが気に入っています。
 御馳走に舌鼓を打ちながら、研究のこと、日本のこと、カリフォルニアのこと、家族のことなど、ぎこちない英語ながら楽しく話しました。Alexのガールフレンドがベジタリアンなので、奥さんが献立に苦労していましたが、おいしいと好評でした。次は、Alexが呼んでくれるそうなので、どんな料理がでるのか楽しみです。

火曜日, 7月 07, 2009

Birdsong Seminar

 Whiteのラボの人にお願いされて、月一でやっているBirdsong Seminarで発表した。夏休みということもあって、聴衆はいつもより少なかった。それでも、ChuckやArnoldをはじめ数人の先生と、ポスドクや院生が10数人来てくれた。少し拍子抜けしたけど、発表は全力でやった。最近やっている歌発達ダイナミクスの情報理論による解析について発表した。たくさんのp*log(p)を見せられても、生物系の人にはピンと来ないかもしれないと思い、いくつか簡単な例を分析してみせた。それが功を奏したのか、わりとみんなに興味を持ってもらえた。マイコドリの求愛ダンスを研究しているSchlingerと博士過程の学生さんは、僕の手法を使ってみたいと言っていた。僕も興味があるのでおもしろそうだ。下の動画はすごい。
 中には、ダイナミクスを語っても、「で?」とか「その現象の実体は何なの?」みたいなことを言う人もいた。それはそれで仕方ない。神経科学の人は、実体がないものはお気に召さない。ある現象を見つけたとして、彼らは、それに対応する遺伝子ニューロンといった実体を探したがる。それは理解ではなくてマッピングだ。「これです」と指差すことが理解じゃない。もちろん重要な作業ではあるけど。ニュートンが万有引力を定式化したのだって、落ちて来るのはリンゴじゃなく、ナシだってカボチャだってよかったはずだ(カボチャが落ちてきたら、骨折じゃすまないだろうけど...)。僕は、実体を流れさせるもの、その効果について知りたい。
 セミナーで発表するとアドレナリンが悪さをする。たぶん、出っぱなしになるんだ。勢いに任せて書いてみた。

日曜日, 7月 05, 2009

AX09

 ダウンタウンのコンベンションセンターで開かれたアニメの祭典、アニメエキスポ(略称AX)に行ってきた [Link]。北米最大のアニメコンベンションだそうで、会場にはお気に入りのキャラのコスプレをした人たちが大勢詰めかけていた。僕もどーもくんもどきと写真を撮らせてもらった(中に入っていたのは女性だったけど)。
 僕は、特定のジャンル(例えば、攻殻機動隊などのSFとか宮崎作品とか)を除いてあまりアニメは見ないが、文化としてあるいは表現方法としてのアニメにはとても興味がある。言葉では一次元的すぎる。絵のみの二次元は広すぎる。空間的広がりと言葉の制約によって、時間も織り交ぜながら、違う方向に緻密な表現を展開できるのではないか。日本のアニメのすごさの所在は人によって解釈が違うだろうけど、理屈はともかく、これだけの人を魅了し続けているのだから、これが何でもない訳がない。下の写真はDSになりたかった人。ふたを閉めたらただの箱。自虐的なギャグだろうか?