今年度から
社会知能発生学研究会のメンバーとなり、先日、第一回目があった。たまに違う研究の話を聞くのは楽しい。
一番興味深かったのは東田陽博先生の「オキシトシンと自閉症」の話だ。
自閉症はコミュニケーション能力に困難が生じる障害で、脳機能の異常が関係しているとされるが発生原因は分かっておらず、治療方法も確立していない。しかし近年、オキシトシンというホルモンを投与すると自閉症の症状が劇的に改善される例が報告されてきているそうだ。
最初にオキシトシンが注目されたのはハタネズミの研究で、一夫一婦制をとる平原ハタネズミの方が一夫一婦制をとらない山岳ハタネズミよりも優位に血中のオキシトシン濃度が高いことから、オキシトシンは社会性と関係があると考えられるようになった。
その後、人間でもオキシトシンの投与で他者への信頼が増すことや、夫婦喧嘩を鎮める効果があることなどが実験的に検証されてきた。そのためオキシトシンはラブホルモンと呼ばれることもある。今のところオキシトシン投与による深刻な副作用は知られていないので、自閉症の治療薬として期待されている。
血中にほんのわずかに存在するホルモンががらりと人や動物の行動を変化させる、というのは考えてみれば不思議だし、怖さすら感じる。生命はまだまだわからないことが多い。