土曜日, 2月 25, 2017

ディープワーク

 ここ数日、ブルーミンは春の訪れを感じさせる暖かさである。そんな中、旅行中の失態や風邪がなかなかなおらず、気分はやや下降気味である。加えて締め切りの山...orz。
 このところ気分転換も兼ねて行きも帰りもバスを使わずに、ポッドキャストを聞きながら通勤・帰宅している。最近よく聞いているのはRebuildという番組で、サンフランシスコやシリコンバレーのプログラマーの生の声が聞けて面白い。もし研究者をやっていなかったら、そういうところでプログラマーになっていたかもしれない(日本では絶対に嫌だけど)。
 Rebuildで紹介していた本で、Deep Workというのが面白そうだった。いろんなものがコンピュータ化されてネットでつながったおかげで、本当は人間はもっと生産的になっても良さそうなものだが、SNSやネットのせいでかえって生産性が落ちて、頭を使う本当に大事な仕事(Deep Work)がしづらくなっている、というものだ。
 研究者の場合もShallow Work(浅い仕事、要するに雑用)ばかりが増えて、鉛筆を持って紙とにらめっこするような頭を使う時間はどんどん減っている。気がつくと、おそらく誰も読まないであろう(しかも、WordやExcelでフォーマットされた)レポートを書いたり、なんだかよくわからないメールを書いていたりする。Deep Workこそが大事で、あとは瑣末なこと。

 

土曜日, 2月 11, 2017

集合知

 CNetSの有志でやっているジャーナルクラブで以下の論文を紹介した。多数決をとったり、確信度で重み付けをするような単純な民主主義的やり方では失敗するような問題にも使える、かなり画期的な方法だと思う。

Prelec, D., Seung, H. S., & McCoy, J. (2017). A solution to the single-question crowd wisdom problem. Nature, 541(7638), 532–535.

 Yes/No問題を与えた時に被験者に次の2つの質問をする。1はその人の信念を聞いているのに対して、2は他者の信念を推論させている。
  1. 正解はどっちだと思いますか?
  2. 他の人たちの答えの分布はどうなっていると思いますか?
 例えば、「フィラデルフィアはペンシルバニア州の州都である。YesかNoか?」という質問をした場合、Yesと答える人がNoよりは多い。なぜならば、フィラデルフィアは大都市であるという事前知識を持っている人が多いからだ。ところが正解はNoである。だから、単純に多数決をとると集合知は間違った答えを導く。
 ところが大勢にこの質問をすると、中にはペンシルバニア州都がハリスバーグだということを知っている人もいる。そしてその人たちは、確実な知識を持っている上に、たくさんの人がフィラデルフィアが州都だと勘違いするだろうという予測もできる。もちろん、Yesを選んだ人たちは他の人もYesと答えるだろうと予測する。だから、予測値としてはYesが圧倒的に多いということになるのだが、実際にYesと答えた人の数は予測値ほどではない。逆に言うと、Noが「意外に多い」ということなる。
 このような「意外に多い」答えを選ぶと、集合知の精度が上がるというのだ。簡潔に言うと、集合の中の優れた部分知をいかに活用するかがポイント。おもしろいな。

p.s. スマートな人たちに混じって議論するのは本当に楽しい。ジャーナルクラブに参加できるのもあとわずかか...。

金曜日, 2月 03, 2017

領域会議

 さきがけの領域会議に参加し、今日ブルーミントンに戻ってきた。領域会議の内容は部外秘なので書くことはできないが、自分が感じたことを書いてみたい。
 僕が入っている領域は「社会と調和した情報基盤技術の構築」で、「新しい情報技術で社会をより良くしましょう」というスローガンのもとに様々な分野の研究者が集まっている。ずばり新しい機械やシステムを作っている人も、基礎研究から新しい技術のアイデアを生み出そうとしている人もどちらもいる。僕は後者でかなり抽象的な類。
 普段は聞けない異分野のしかもレベルの高い話が聞けてとても刺激になった。ただ、何がポイントなのか消化不良になった発表もあった。もちろん自分の勉強不足によるところが大きいが、分野によって発表スタイルが違うことも理由の1つだ。「あれもやってます、これもやってます」というストーリーのない発表や、「これが知りたい」というのが見えない発表が個人的に苦手なのだ。
 なるほどエコーチェンバーから出るというのはこういうことかと身をもって体験した。これからがますます楽しみだ。