土曜日, 2月 11, 2017

集合知

 CNetSの有志でやっているジャーナルクラブで以下の論文を紹介した。多数決をとったり、確信度で重み付けをするような単純な民主主義的やり方では失敗するような問題にも使える、かなり画期的な方法だと思う。

Prelec, D., Seung, H. S., & McCoy, J. (2017). A solution to the single-question crowd wisdom problem. Nature, 541(7638), 532–535.

 Yes/No問題を与えた時に被験者に次の2つの質問をする。1はその人の信念を聞いているのに対して、2は他者の信念を推論させている。
  1. 正解はどっちだと思いますか?
  2. 他の人たちの答えの分布はどうなっていると思いますか?
 例えば、「フィラデルフィアはペンシルバニア州の州都である。YesかNoか?」という質問をした場合、Yesと答える人がNoよりは多い。なぜならば、フィラデルフィアは大都市であるという事前知識を持っている人が多いからだ。ところが正解はNoである。だから、単純に多数決をとると集合知は間違った答えを導く。
 ところが大勢にこの質問をすると、中にはペンシルバニア州都がハリスバーグだということを知っている人もいる。そしてその人たちは、確実な知識を持っている上に、たくさんの人がフィラデルフィアが州都だと勘違いするだろうという予測もできる。もちろん、Yesを選んだ人たちは他の人もYesと答えるだろうと予測する。だから、予測値としてはYesが圧倒的に多いということになるのだが、実際にYesと答えた人の数は予測値ほどではない。逆に言うと、Noが「意外に多い」ということなる。
 このような「意外に多い」答えを選ぶと、集合知の精度が上がるというのだ。簡潔に言うと、集合の中の優れた部分知をいかに活用するかがポイント。おもしろいな。

p.s. スマートな人たちに混じって議論するのは本当に楽しい。ジャーナルクラブに参加できるのもあとわずかか...。

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