土曜日, 5月 26, 2007

科学者、あるいは有機交流電燈の青い照明

科学者という職業、というか生き方は、この皮膚のように引きはがせないものとして続いていくのだろう。科学者になろうと思ったのはたぶん高校2年の時だったと思う。その頃流行っていたのがホーキングの宇宙論で、相対性理論や量子論を駆使して宇宙の起源や進化を解き明かすそのエレガントさにすっかり魅了された。以後、浪人生活をへて物理学科へと進学し、さらに紆余曲折を経て人工生命に到る。悩みも多いが、科学者をやめたいと思ったことはない。性分なのか。
 ここで、科学者に関して考えさせてくれるスタイルの違う本を2冊紹介したい。一冊目は、酒井邦嘉著の「科学者という仕事」。酒井さんは言語の脳科学の騎手で、僕は言語学の授業でお世話になった。著名な科学者の逸話や文献を豊富に取り入れて、これから科学者を目指す人にアドバイスを送っている。とにかくすごい文献の量で著者の熱意を感じる。教科書的で、良くも悪くも正論。

 二冊目は、大沢文夫著の飄々楽学。著者は生物物理学のパイオニアで紫綬褒章も受章している。駒場のセミナーで一度お目にかかったことがあるが、その人柄にとても親しみを感じた。いかに大沢先生が研究を楽しんでやってきたかが、生き生きと描かれている自伝。高分子電解質、ゾウリムリ、筋肉、鞭毛モーター、これだけ多様な対象を渡り歩きながら、しかしその背後に潜む規則を明らかにし、ルースカップリングという概念に到達する。自分のやってきたことで勝負のできる本物の科学者だ。

 この2冊を比べると、酒井本は、「科学者とはペケペケでなくてはならない」という実直な感じ。一方、大沢本は「ペケペケすると楽しいよ」という先輩からのアドバイス。飲み物に例えると、前者は青汁で後者はデカビタC。どちらもいいが、効き方が違う。

月曜日, 5月 21, 2007

デザートビネガー

 最近流行っていると風の噂で聞いていた「デザートビネガー」を新宿高島屋のオークスハートで購入した。僕は酸っぱさがガツンとくるシークワーサー&パイン、彼女はまろやかな酸味の苺ビネガーを買った。説明書によると、素材にあった酵母を選び発酵させることによって、ソフトな酸味とあまい香りに仕上げるのだそうだ。僕はサイダーや炭酸水に入れて清涼飲料として飲んでいるが、ヨーグルトやアイスにかけたり、パンにつけたりと、工夫次第でいろいろと楽しめる。たまにリンゴ酢をコンビニで買って飲んでいたが、疲れた時はデザートビネガーを飲むとすっとする。ブルーベーリーやラズベリー、トマト&ライムなんていうのもある。季節の限定ビネガーを贈り物にするのもいいなあと思った。ちょっと高いのがあれですが。

日曜日, 5月 20, 2007

受胎告知

遅ればせながら、上野の東京国立博物館で開催されているレオナルド・ダ・ヴィンチ展のレポート。今回の目玉は「受胎告知」。行ったのが夕方頃だったので意外にすいていて、すぐに受胎告知を見ることができた。受胎を告げる天使ガブリエルと処女マリアが、計算されつくされた構図の中に整然といる。細部にわたる緻密さと全体の調和、ダ・ヴィンチ初期の傑作と言われるのもわかる。この絵は、右斜めから見ることが仮定されて構図が組み立てられているそうだ。1974年には「モナ・リザ」が初来日して、ものすごい混雑になったのをテレビで見たことがある。僕自身は国際会議ECAL2003に行ったついでにルーブル美術館で本物を見た。意外に小さかったのと、防弾ガラスの完全防備にびっくりしたことを覚えている。芸術だけでなく、天文学、物理学、解剖学、建築学とマルチに才能を発揮した天才ダ・ヴィンチ。改めてその才能に敬服した。

日曜日, 5月 13, 2007

フューチャリスト宣言

梅田望夫氏と茂木健一郎氏の対談をまとめた「フューチャリスト宣言」 を一気に読んだ。ポジティブな雰囲気が満ちていてとても心地がよい。前向きの加速度を与えてもらったような感じがした。僕ははどちらかというと、時々刻々と変わっていくものに臨機応変に対応するのは苦手なほうだ。しかし、「昔は良かった」と意地になるのではなく、変わっていくものや新しいものを受け入れる勇気は持ちたいと思う。
 ブログでこの本の書評を読んでみるといろいろな批判があるが、梅田さんが言うように「人の欠点をあげつらって何になる」 と僕も思う。自分がアクションを起こさなきゃ。五木寛之だったか、楽観的というのは「臭いものに蓋をする」というふうにして負を見ないことじゃなくて、負 をちゃんと見定めるところから始まる、というようなことを言っていたと思う。両氏のポジティブさもそういうところから来るのだろう。さて、せっかく加速度をもらったので、さぼっていたジョギングを再開するところから僕は始よう。

木曜日, 5月 03, 2007

言葉を使うサル

 原著のタイトルは、The Talking Ape。これまで出版されている言語進化の本の中では、最新の知見も含め一番網羅的にまとめられている本です。訳も読みやすい。著者は産出よりも了解の方が言語能力を進化させた原動力であるとの立場で、言語学、人類学、考古学、霊長類学、進化生物学、手話研究などの知見を整理していく。しかし、音声学習の側面が軽視されていたり、著者の専門でない部分は理解が浅い感じがするので、鵜呑みは禁物。エーチソンの「ことば 始まりと進化の謎を解く」(Link)から比べると、言語進化の研究が確実に進歩していることがうかがえる。ようやく開いた言語進化というパンドラの箱にふたをしてはいけない。



水曜日, 5月 02, 2007

Ms.ベティ

 理研の入り口にしばしばいる猫。守衛さんいわく、ベティという名前があるのだそうだ。聞くところによると、ベティは以前は食堂近くにいたのだが、そこを縄張りとする猫集団にボコられ頭に大怪我をおって、入り口付近に住み着くようになったそうだ。ここなら、どら猫に襲われる心配はないし、食べ物は親切な研究員のおばさん(おねえさん?)が持ってきてくれる。冬はヒーターもあるし。ベティは僕と守衛さんの会話を聞いているのか、時より耳をパタパタしながら日向ぼっこをしていた。ベティのゴールデンウィークはこうしてゆっくりと過ぎてゆく。