「今、ここ、私」というのは、人間とは何か?を議論をするときには必ず出てくるキーワードだ。哲学でこれをやると深刻で、夜も眠れなくなるし、食べるラー油(下)をかけたご飯もおいしく食べられなくなる。しかし、「イマココ: 渡り鳥からグーグル・アースまで、空間認知の科学」が扱っているのは、そうした哲学的な問題ではなく、空間認知という科学的な観点から「今、ここ、私」を考えるということだ(私については明示的には入ってないけど)。
トピックは多岐にわたる。まず、昆虫や動物がどのような認知能力を使って、エサや巣への道を見つけたり、迷子にならずにすんでいるかなどの事例がたくさん紹介されている(このパートが冗長な気がするが)。その後、トピックは人間の空間認知に移り、家や都市の実空間の設計特徴とそれに関係する心理学、さらにはインターネットのバーチャルな空間や自然環境、未来にまで話は及ぶ。最後に、「アーキテクチャの生態系: 情報環境はいかに設計されてきたか」の著者、濱野智史さんが情報空間のアーキテクチャについてわかりやすい補論を寄せている。
ところどころ訳が読みにくいのが残念だが、盛りだくさんと意味ではお得な本だ。目次は以下の通り。
イントロダクション
パート1 アリがショッピングモールで迷子にならないわけ
第1章 ターゲットを見つける
第2章 ランドマークを探す
第3章 ルートを探す
第4章 世界に埋め込まれた地図
第5章 ネズミの頭の中の地図
第6章 ヒトの頭の中の(混乱した)地図
パート2 空間をつくるヒト、ヒトをつくる空間
第7章 家の中の空間
第8章 働く空間/働きかける空間(ワークスペース)
第9章 都市空間
第10章 サイバースペース
第11章 自然空間
第12章 空間の未来
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