人工知能が人間を超える日がそう遠くない未来に訪れる。それがシンギュラリティーと呼ばれているものである。5年前なら「またまたご冗談を」ですますところだが、自動運転がかなり現実味を帯び、コンピューターが囲碁で人間に勝つ今日この頃では、あながち嘘ではないのかも、と思ったりする。
この本の中で「全脳エミュレーション」が紹介されていた。それは、人間の脳を高い精度で計測してコンピュータにマッピングし、外部環境との接続の中でシミュレーションを行うというものだった。先日、たまたま参加したセミナーで、脳のカルシウムイメージングの話を聞いたのだが、その技術が驚くべき速さで進歩していて、このマッピング作業は決して不可能ではないところまで来ているという印象を受けた。自分が理研脳センターにいた頃は、ようやく複数のニューロンから電機信号がとれるようになった頃で、生きたままの脳を丸ごと測ることなど夢のまた夢だった。
全脳エミュレーションができたからといって、直ちにコンピュータに意識が宿り、コンピュータが我が物顔で街を闊歩する日が来るとは思わないが、人間とコンピュータとの付き合い方は大きく様変わりするだろう。我々の情報摂取の仕方も。
この本は楽観論でも悲観論でもなく、バランスよく書けた良書である。
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