金曜日, 7月 23, 2021

文庫本化

  拙著「フェイクニュースを科学する 拡散するデマ、陰謀論、プロパガンダのしくみ」の追補版がDOJIN文庫から出版されます。正式な発売日は7/25ですが、製本が遅れているそうで、7/30頃になるそうです。

 以下は、文庫版あとがきから引用。

 文庫化にあたり、本文全体を再度チェックしましたが、根本から書き直さなければならないような内容はなかったため、古くなった記述をアップデートし、残っていた誤植を修正するのに留めました。その代わりに、二〇一八年以降のフェイクニュースをめぐる重要な動向について追補を書き加えることにしました。とりわけ二〇二〇年に生じた新型コロナウイルスの世界的流行にともなう変化は、情報生態系に不可逆的な影響を及ぼしました。そのことについて、正確かつわかりやすく記述するよう心掛けました。

  追補とはいえ、新たに1章を書くのにも、全体をチェックして間違いを潰すのにも、かなりの時間を費やしました。講義の準備や学生の指導、プロジェクトの研究で一杯一杯の状態で、この作業をすることは容易ではありませんでした。そして、アシスタント、出版社の方々、大勢の方がたの助けがあったからこそ、出版に漕ぎ着けることができました。この場を借りて感謝したいと思います。

 文庫版になった本書が、多くの方々のお役に立つことを願っています。

木曜日, 7月 22, 2021

新聞記事の事前確認

  先日、日本経済新聞に取材を受けたときのコメントが掲載された。電子版の記事はこれ。この記事に関して、びっくりな経験をした。

 これまで新聞の取材を受けて、それが記事になるときは、コメントした箇所の記述に間違いがないか確認してきた。いつ記事が出るか内々で教えてくれる記者もいたし、出てから新聞を送ってくれる記者もいた。少なくとも事前に確認はしてきたので、それが当たり前だと思っていた。

 しかし、この記事は内容確認することもなく、記事になったことが知らされることもなく、日経電子版のアプリを見ていていてたまたま見つけた。もし、アプリを見なかったら、この記事に気づくこともなかっただろう。しかも、不正確な記述があった。慌てて記者にそのことを指摘したところ、意外な返信があってびっくりした。

 事前に記事を見せるような行為は、報道機関はやってはいけないというのだ。 おそらく報道の自由と関係しているのだろう。たまたま別の新聞の取材を機会があったので、担当記者に質問してみたところ、同じことを言っていた。 ただし、慣習として、事実確認をしてもらうことが多いそうだ。 そして、これからは取材を受ける前に、事実確認をさせてもらえるか尋ねるのがよいとも。

  意外だったが、記事の確認を求められなかったこと自体は仕方ないようだ。 ただし、自分の名前が出ている以上、不正確な記述は困るので、修正してもらった。

水曜日, 7月 14, 2021

オオタニ

 朝起きると、毎日のように大谷翔平選手のニュースが飛び込んでくる。特大のホームランをかっ飛ばし、160キロの豪速球を投げる二刀流。「そんなこと無理なんじゃないか」というような懐疑の声には、結果で答える。何て格好いいんだろう。

 野球に真摯に取り組む姿や礼儀正しさ、人間性、大谷選手の魅力をそんなふうに表現することはできる。しかし、端的にいうと、「本物」であり「プロ」なのだ。

 では、自分には何ができるか。科学者として、まだ何一つ「発見」などと言えるようなものを見つけていない。アインシュタインやホーキングに憧れて、科学者の道を選んだのではなかったか。

 原点に立ち返り、科学者らしい科学者に。そうなりたい。

日曜日, 7月 11, 2021

反転攻勢

  東工大に異動し、担当する授業は初めての教科ばかりだったので、前期は講義スライド作りにかなりの時間を要した。とても良い勉強の機会にはなったが。昨日で1Qと2Qの自分の担当分を終えたので、授業に関しては、これでひと段落(レポートの採点や院試など、気の抜けないイベントは続くが)。

 一定の難易度を保ちつつ、わかりやすい講義スライドを作成し、わかりやすく講義するのは指南の技。1Qの授業アンケートのコメントを見ると、「難易度設定は適切で、わかりやすい」との声が多かった。かなり苦労して準備したので、そのようなポジティブな意見はうれしい。

 一方、1名だけ、「何を意図した授業かわからない」という声もあった。さすがにショックを受ける。全員が満足するような授業はもちろん無理。その人が感じる満足度は、先生の力量だけでなく、学生のモチベーションや基礎力(特に、数学とプログラミングについての)、レディネス(準備)にも大きく依存する話。そういうネガティブな意見もあるという現実は受け止めることにする。

 講義スライドの作成に使っていた時間が空くので、いよいよ溜まっている論文執筆、本の執筆、各種プロジェクトの研究を一気に進めなければならい。これらに時間を割けないことに後ろめたさを感じつつ、講義や雑用をこなさなければならなかった。反転攻勢の時。