金曜日, 3月 29, 2024

サプライズ

  3/26はあいにくの雨だったが、東工大の学位授与式がとり行われた。公式情報によると、東工大から学位を授与されたのは、学士1,041人、修士1,653人、専門職学位課程25人、博士167人とのこと。みんな、これからの日本を背負っていく逸材たちだ。

 私の研究室からは4名(専門職学位課程)が無事に卒業した。うち2名は、プロジェクトレポートの優秀賞に選ばれた。また、1名は社会人学生として、博士後期課程に進学する。

 学位記手交と謝恩会後、笹原研の打ち上げをした。久しぶりに学生たちと会い、楽しい時間を過ごし、卒業生たちに言葉を贈った。この日の主役は卒業生だが、学生たちがサプライズで、私の教授昇進のお祝いを準備してくれていた。ハンディーなコーヒーミルと手編みのドリッパー。プレゼントはもちろんだが、学生たちのその気持ちがとてもうれしい。

 2023年度が終わろうとしている。昨日、CICの居室のドアに、准教授から教授に肩書が変更されたマグネットが張られた。定年退職まで髀肉之嘆なんてまっぴらなので、「自由な発想による研究」がずっとできてない現状を打破する。

 思いっきり尖った研究をする。それが自分がやりたいこと。





 

 

金曜日, 3月 15, 2024

研究室運営

  研究室を運営するというのは本当に難しい。名大時代は、いつも誰かしら研究室に学生がいて、学生同士が教え合う「横の学習」があった。今の環境は社会人がメインの特殊な環境で、横の学習が原理的に難しい。

 大学の廊下でばったりあって、「あの件はどうなりましたか」みたいな会話はできない。オンラインベースだと、会おうと思わないと会えない。それでもその制約を克服しようと、負担増を覚悟で、ゼミを週2回に増やし(DとM)、フルタイム学生の勉強会、そして1on1を行っている。

 この3月で笹原研の3期生が卒業する。これまでの卒業生は3名、今回は4名で、合計7名になる。うち、3名がプロジェクトレポートの優秀賞を受賞し、さらにそのうちの1名は総代を務めた。博士後期課程に進学したのは、7名中3名。これが東工大に移籍してからの数字。ゼミ等をおろそかにせずに取り組んだ成果だと信じたい。

 仕事は増える一方だが、教員一人で研究室運営をしなければならい。自分の負担は軽減しつつ、研究室全体で成長していくにはどうしたら良いか。そして、この特殊環境でも研究を諦めず、成果を出していくためにはどうしたら良いか。模索は続く。

土曜日, 3月 09, 2024

世界は経営でできている

 田町の本屋さんで見つけて、面白そうだったので、『世界は経営でできている』(岩尾俊兵 (著))をさっそく買って読んでみた。この本でいうところの「経営」とは、「価値創造という究極の目的に向かい、中間目標と手段の本質・意義・有効性を問い直し、究極の目的の実現を妨げる様々な対立を解消して、豊かな共同体を作り上げること」である。

 仕事、家庭、恋愛、勉強、老後、科学、歴史など色々なテーマに関して、あるある的な失敗事例を取り上げ、それらがどう経営の視点で捉えられるのかが書かれている。シニカルで、時に自虐的なユーモアを交えつつ、小気味よいテンポで展開される。お笑いのリズムネタのように、プロットが定型なので、下手すると途中で飽きられてしまうが、そうならずに読者を誘うのは筆者の腕だろう。

 難しいことが書かれているわけではない。取り上げられているテーマにおいて、経営が欠如していること(=目的と手段の転倒、手段の課題化、手段による目的の阻害)が問題なのだという。私が特に関心したのは、以下の記述。

  • 自己と他者を同時に幸せにする価値創造でしか、個人にも集団にも恒久的な幸せは訪れない
  • 価値を無限に生み出せるのならば、奪い合う必要がない(価値は有限だと考えるから奪い合いが起こる)
  • 他者は奪い合う相手ではなく、価値を創り合う仲間だ
 人間とは、価値創造によって共同体全体の幸せを実現する「経営人」であるという。この本を読むことで、少し日常の心構えが変わるのではないだろうか。


異分野融合の楽しさ

 日本応用数理学会の応用数理ものづくり研究会セミナーで講演をしてきた。以前、アドバンスソフト株式会社のセミナーで講演したとき、参加者のお一人からお誘いいただいた。数値シミュレーションをバリバリやられている大学や企業の方が多いので、私は完全にアウェイだな、他の講演者の話も楽しめないかなと思っていたら、そんなことはなく、とても面白かった。

 大規模地震シミュレーションをAIを使って高速に計算したり、AI融合シミュレーションで都市街区スケールで微気象予測するというのが前半の二名の話。特に、二人目は東工大の先生で、大学発ベンチャーもやられているということ。後半は、私が毎度まいどのフェイクニュースと生成AIの話。場違いな気もしたが、異分野の集会で話をするのは慣れっこ。四人目は、最近の生成AIのトレンドで、自分では追い切れていなかったので参考になった。

 物理シミュレーションと深層学習を組み合わせるという発想がなかったので、社会科学で応用の場面があるかはともかく、とても面白かった。「AI融合シミュレーション技術=物理シミュレーション(時間外挿)+AI超解像(空間内挿)」という発想はすごい。

 しばらく、あまりにも忙しすぎて、学会や研究会に参加できていなかったけれど、せっかく東京にいるのだから、フットワーク軽くこういうセミナーに参加したいところ。(しかし、実際は会議や雑用に阻まれて、なかなかそうできない)

 今日の特別講義が終われば、とりあえず謝金が発生する2023年度の講演・講義は終了。とにかく今年度は数が多かった。来年度は控えよう。