火曜日, 6月 10, 2025

国立大学教授のお仕事

 「国立大学教授のお仕事―とある部局長のホンネ」(木村 幹 (著))という本を読んでいる。この手の話題は、ややもすると暴露本的で、恨み辛みの表現で下品になりがちだが、著者の経験として淡々と客観的に描かれていて、読んでいて苦にならない。

 「研究がしたくて研究者になったのに、なぜこんなに時間がないのか?」そんな疑問は大学教員なら誰しもが思うことだろう。依頼された大量の仕事をとにかく片付ける、という作業していると、あっという間に時間がなくなり、研究・教育に割く時間が枯渇する。プライベートの時間まで仕事が侵食してきて、だんだん時間の感覚が麻痺してくる。

 この本を読んでも、その問題が根本的に解決するわけではないが、少なくとも国立大学どのような歴史を辿って、教授が今のような境遇になっているのかを知ることは大事だろう。若手研究者がこれからのキャリアを考える際にも、参考になると思う。

 なぜ教授になれたのか、それは著者も書いているように、「運」と「縁」ということに尽きる。もちろん、その「運」と「縁」を手繰り寄せるための努力は、当時それなりにしたのだろう。今となってはよく覚えていないが。覚えているのは、その時その時、置かれた場所で一生懸命、やれることをやったということ。

 目標を持ってコツコツとやる。日々の素振りが、大谷の特大の一発を生むように。


月曜日, 5月 19, 2025

49

 昨日誕生日を迎え、49になった。ここまであっという間だったような、ものすごく時間がかかったような。40を過ぎてからは、時間の過ぎ方がえげつなく早く感じた、それだけは確かだ。光陰矢の如し、とはよく言ったものだ。

 あれやこれや、いろんなことに関わり過ぎて、やりたいことに時間が割けなくなっていることは常態化している。これを期に、やりたいことに優先順位をつけ、断捨離をしようか。

 One thing at a time. それが自分には似合っている。 

土曜日, 5月 03, 2025

髀肉之嘆

  髀肉之嘆。劉備の発言が故事になったことは知られている。今の私を指し示す言葉であるかもしれない。

 科学をせず、「消防ホースで水を飲むがごとく」のサムシングエルスをこなしている。「これで科学者と言えるのか?」「いや、とにかく組織のためにやるのだ。」ナイフのような声がやってきては消え、消えてはやってくる。

 中野のコワーキングでこの文章を書いている。この辺りは15年ぐらい前、公募の書類を郵便局に出しに行くついでに、よくジョギングしたものだった。あの頃、科学者としての自信と不安の揺れる気持ちを抱えて、走っていた。すっかり、中野駅の周辺は変わってしまった。自分は定職についた。しかし、文字通り髀肉之嘆を地で行く自分がいる。

 何か全く関係ない新しいことに挑戦することからはじめようか。それで脾肉が減るならなお結構(外食・惣菜ばかりでなく、ちゃんとした食事をとらないと)。

 

 

 

月曜日, 4月 21, 2025

ああ吉祥寺

 子供たちをつれて吉祥寺に行ってきた。スワンボートに乗ろうと井之頭公園にいったら、人、人、人。桜の季節ほどではないが、少し待ってからスワンボートに乗った。30分で800円。まあまあ高いですね。

 子供たちは楽しかったようで、夢中になってスワンボートを漕いでいた。家族でボートに乗ったことがなかった。その後、ぐるっと講演を散歩した後、茶房武蔵野文庫に向かった。

 そうえいば名古屋に引っ越す前は、夫婦二人でカフェ目当てで、たまに吉祥寺にも散歩に行っていた。このブログにも何度か登場している。茶房武蔵野文庫のことはすっかり忘れていたが、二人だけで訪れた喫茶店に子供たちを連れて再訪できたのは良かった。

 あっという間に大きくなってしまうであろう子供たちと、こうして休日を過ごせるは幸せなことだ。










土曜日, 4月 12, 2025

現代の国語

 この度、拙著「見たいものだけ見る私たち」が三省堂発行の中学3年生向け国語教科書『現代の国語』に掲載されました。本日、実際に教科書を手に取りました。肩書きに「計算社会科学者」と書かれているのも感慨深いです。

 僕が中学生の頃の教科書は白黒だったし、あんまり面白くなかった。今の教科書はカラフルで、内容も多様で楽しい。SEKAI NO OWARIのSaoriさんも寄稿しています。こういう教科書で勉強したかった。

 大学で物理を学び、複雑系で博士号をとって計算社会科学者になり、国語の教科書に自分の書いたものが掲載される日が来るとは。この文章が生徒の皆さんの学びの一助となれば幸いです。





土曜日, 3月 29, 2025

社会現象としてのSNS

 楽天大学ラボで山口真一さん、宇野常寛さんと対談しました。ショート動画全盛のこの時代、このチャンネルでは長い尺で対談するからこそ、出演者から語りを引き出せるとのコンセプトで番組作りをしているとのこと。

 相変わらず私はテレビやYouTube向きではないなと、引き出しのなさ、自分の才能のなさに打ちのめされつつも、敢えて苦手なことに挑戦して逃げなかったことだけは、自分をほめてやりたい。ぜひご笑覧ください。

「社会現象としてのSNS―情報社会の現在地と未来|山口真一×笹原和俊×宇野常寛」





木曜日, 3月 20, 2025

花粉症

  いつから花粉症になったのか覚えていない。少なくとも小学生の頃は、洗面器で目を洗っていた記憶があるので、その頃から目のかゆみ、花のムズムズ、疲労感には悩まされていた。

 大学院生の頃から市販のアレルギー薬を飲むようになったが、3月といえば学会シーズンで、発表の際に口がパサパサになり、思うような発表ができずに大変な思いをした。今飲んでいるアレグラは第一世代の薬よりはましだが、やはり薬を飲むと調子が悪い。頭がボーっとするし、疲労感もある。

 特に今年は例年よりもひどい。去年の効果があった目薬も点鼻薬もあまり効かない。この憂鬱が終わるころには、桜も散り、新学期が始まっている。ああ、花粉症。

日曜日, 3月 16, 2025

なんとか乗り切った..のか

  3月のキツキツのスケジュールは本当に応えた。道徳研究会(3/7)、BMOTの講演(3/7)、SMWSの発表(3/10)、SSH成果発表会(3/12)、スマートニュース研究会(3/13)、SSIワークショップ(3/13)、DSAIシンポジウム(3/14)、ELSI大学サミット(3//16)。

 体調を崩したらアウトというプレッシャーと、これらのイベントのこと以外はほぼ何もできないという不自由さ。もちろん、発表資料の作成には発表時間の何倍、何十倍の時間がかかっている。

 イベントが始まる前は、これは何の修行なんだと思ったが、終わってから振り返ってみると、新しい知識やつながりができて、それはそれで良かったのだと思える。

 今日のイベントで、何とか山場は乗り切った感はある。あとは、連携協議会、電子情報通信学会、学位記授与式、入試説明会にMOTオープンハウス。これらを無事に乗り切ったら春休み...、という暇もなく、新学期に突入する。

 忙しさの渦中は意外と平気だが、一息ついた時に心に「どっと疲れが出る」という経験をこれまでもしてきたので、注意が必要だ。残り1年となった主任の重責を果たしつつ、研究・教育も頑張る。

  

月曜日, 2月 24, 2025

打鍵感

  科研費をとって最初にかったのがHappy Hacking Keyboardだ。それ以来、その打鍵感のよさからずっとラボでも家でも愛用している。家では無刻印のものを使っていて、サイトのログインで何桁かの番号がもとめられる際、推し間違えてクソっとなるが、それを上回る満足感。

 ここにきて、Lofree Flowのキーボードを知った。さっそくAmazonで注文した。これが中毒性の大会心地よい打鍵感で、なかなか良い。タイプ音はHHKBよりもカタカタ感が強くで大きめだが、私はそれが気にならない。無意味にずっとカタカタやっていたいぐらい気持ちが良い。

 まずは家で仕事をするときはLofree Flowをつかい、ラボではHHKBを継続する。これで様子をみて、どうするか決める。もしかしたら、どちらもLofree Flowにするかもしれないし、やはりHHKBにもどるかもしれない。打鍵感の心地よさは大事。

火曜日, 2月 11, 2025

特効薬でない

 2016年3月に最初の修士学生を送り出した。当時は私も若く、自分が大学院で経験したことを学生に伝えるのだと鼻息荒くしたが、挫折した。「博士に進学して研究者になる」というのが当たり前の環境の方が少数派なのであって、そうじゃない方が大多数なのだから、自分の経験に依拠してもうまくいかなかったのは無理もない。

 あれから年齢を重ね、より多様な研究テーマをを扱うようになった現在は、基本的には学生のやりたいテーマを尊重して支援することにしている。最低限抑えておく必要があるということは指導するようして、できるだけ学生の自主性とやる気に任せている。そうすると、学生ごとの差がどうしてもでてくる(もともとの能力ややる気は、指導だけでどうにかなるものでもない)。それでも、教員ががちがちにレールを敷いてしまったら、学生が自ら考えて試行錯誤する機会を奪うことになる。学生を信じて見守る、という以外にはない。

 その気持ちに変わりはないが、本当にそれで良かったのかと思う気持ちもある。ものの本によると「期待するからつらいのだ」というのがあるが、自分の学生に期待しない教員などいるだろうか。

 自分が費やしたこの時間は、誰かを・何かを改善することにつながったのだろうか。その答え合わせは、おそらく何年も先になるのだろう。教育とは特効薬のように全員に効くものではなく、すぐに効果が見えるものでもない。

 

土曜日, 1月 18, 2025

共通テストの試験監督

  何度か試験監督の話題はブログに書いているが、今回は共通テストのそれである。センター試験が共通テストになった。本当は、今回の試験監督は免除されていたのが、都合がつかなくなった教員のピンチヒッターをやることになった。

 名大の時は明和高校の担当で、2日間まるまる潰れるので、なかなかにしんどい仕事だった。ただ、空き時間に話をすることができて、それはそれで楽しかった。「2日間、ミスなくやりましょう。オー!」みたいな感じになるので、一体感が生まれ、よかった。

 それから、栄から明和高校に行くまでに、古い町並みがあったり、名古屋城の城壁の名残があったりして、それを見ながら歩くのは楽しかった。そして、試験監督の仕事を終えると、栄の駅地下のタリーズでコーヒーを飲んでから、家路につくのが楽しみだった。

 東工大に移ってからは、幸いなことに担当は2日のうち1日でよい。それは助かる。ただ、名大の時のように、先生とおしゃべりするとか、街並みを見るとか、そういった楽しみはない(誰もそんなものを求めてないかもしれないが...)。間違いをおかさないように、神経をすり減らす一日になる。

 今回は大きなトラブルなく終えることができたので、よしとすることにしよう。

木曜日, 1月 02, 2025

あけおめ2025

 年男だった2024年が終わり、2025年に突入。今年はいろいろと節目の年になりそうだ。

 2020年にスタートしたCRESTのプロジェクトは、2025年度が最後(2026年3月終了)。コロナ禍で、かつ、名大から東工大に移籍するタイミングだったので、成果が出せるかどうかがまったく不確実な状況だった。

 それでも、名大の学生たち、CRESTのRA、ポスドク、共同研究者に恵まれて、想定以上の成果を出すことができた。新しい論文が2つ、新しい実験も1つ控えている。小さなグループにしてはがんばったと思う。さきがけのように単独でやるのと違い、グループで成果を出すマネジメントについても学ぶことが多かった(苦労も多かった)。

 一方、2024年10月にスタートしたKProgramのプロジェクトは、今年トップギアにもっていく必要がある。まずは、優秀な人材集め。Brunoが加入したのは幸運だったがが、さらにメンバーが必要。現職の特殊な環境で研究成果を出すは至難の業。

 主任の役職も2025年度まで(換言すると、まだ4か月しかたっていない...)。とにかく、大過なく、東京科学大MOTの「顔」を務めなければならない。これが達成すべき大目標なので、細かいことは気にしない。リーダーとはかくも孤独なものかと身にしみて感じた。しかし、この経験も無駄ではないだろう。

 有限の人、物、金、そして時間、これらの制約の下で成果を最大化する。自身の鍛錬もおこたらない。気持ちは地方の戦国大名。それも悪くない。