月曜日, 12月 17, 2007

したたかな生命

 今年は、ビリーズ・ブートキャンプや「でも、そんなの関係ねぇ」が流行った。その裏で生命に関する本が密かに流行った年でもある。以前紹介した「生物と無生物のあいだ」は、この類の親書では異例の大ヒットとなった。それ以外では、池上さんの「動きが生命をつくる」や今回紹介する北野宏明さんの「したたかな生命」などの良書が世に出た。
 北野さんと直接面識はないが、システムズ・バイオロジーの提唱者であることや人工生命の初期に関わっていたということは知っていた。この本では、ロバストネス(頑健性)という視点から、生命システムの特徴を述べている。大腸菌、癌細胞、ジャンボジェット機、インターネット、このようなシステムに共通するのがロバストネス、そしてこれとトレードオフの関係にあるフラジリティー(脆弱性)である。ロバストネスには次の4つが大事だと説く。

1. システム制御
2. 対故障性
3. モジュール化
4. デカップリング

 そして、研究者によっては進化的な視点がごっそり抜けているか修辞的に言及されるのみだが、本書ではロバストネスと進化可能性についても考察している。これだけ抽象的な概念を一般向けにここまでわかりやすできる北野さんはすごい。自己拡張共生による進化という自説を披露しているが、パブリッシュしている論文に基づいているのには感心する。それ以外の文献もしっかりしている。頭を整理するにはとてもよい本だった。北野さんは、現在も大きなプロジェクトを率いてがつがつ研究しているようだ。すごい。



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