火曜日, 7月 01, 2008

活力を与える「物理」

 7月になり、日差しが夏らしくなってきました。太陽の光ように熱い情熱月の光のような熱すぎない冷静さで、研究をがしがし進めたいと思います。
 さて、最近図書館で借りて読んでいる本を紹介します。鈴木増雄先生(現 東京理科大学)の”活力を与える「物理」”。物理学会に行くと、鋭い質問やコメントを飛ばしている鈴木先生をお見かけします。僕の先生である池上さんの先生です。目次は次の通り。
  1. 「もの」の総量は増えたり減ったりしない? - 質量とエネルギーの保存則について
  2. 自然をより深く理解することが物理の基本 - ルシャトリエ・ブラウンの原理から散逸最小の原理まで
  3. 無秩序から秩序への臨界点での特徴は何か - フラクタルと自己相似性
  4. 水が凍るという自然現象が教えてくれるもの - 物理学的、数学的な秩序と無秩序とは?
  5. 秩序が生まれる、秩序が無くなる「限界」とは? - 相転移のメカニズムを探ってみよう
  6. 拡張・変換の視点で限界・困難を乗り越える - てこの支点から変換の視点へ
 目次からわかるように、このコンパクトな本の中に物理のエッセンスがぎゅっと詰まっている。物理学を知り尽くした人にしか書けない本だ。例えば、理科の授業で習う質量保存則エネルギー保存則が、相対性理論のE=mc^2(E:エネルギー、m:質量、c:光速)で統一的に扱えること、さらに素粒子の世界でも保存則が成り立つためには、4次元(3次元空間+時間)では足りず、もっと高次元(正確には10次元)の時空が必要になること(それを扱うのが超弦理論)、がすっきりと説明されています。学部時代に、こういう鳥瞰図を手に入れたかった。物理学科を卒業した人にこそ読んでもらいたい一冊。

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