Marschak Memorial Lectureを聞きに行ってきた [Link]。この記念講演の歴代講演者には、ノーベル賞受賞者や著名な研究者が名前を連ねている。僕が知っているだけでも、ゲルマン、クリック、ミンスキー、ウィルソン、エーデルマン、ダイアモンドらがいる。なんとも贅沢な講演会だ。
今回の講演者はフリーマン・ダイソン(プリンストン大学名誉教授)。宇宙物理学や数学で重要な研究をした他、科学のあり方や科学技術と未来についての著作が多数ある。演題は「Domestication of Biotechnology(バイオテクノロジーの家畜化)」。ダイソンは小柄で細身で、スーツに赤ネクタイという出で立ちで登場し、おもむろに準備していた原稿を読み始めた。どうやら、現在執筆中の「The Age of Wonder(Richard Holmes著 )」の書評をそのまま読んでいるようだった。スライドなしの朗読だったので、完全には理解できなかったが、人間が生み出したバイオテクノロジーが、人間の生活、文化、更には人間そのものを変えて行く未来について考察を述べていた。つまり、作ったものに作られていく未来だ。85歳とは思えないほど、体力と知力と自信を感じるトークだった。これのもとになった昔の書評は、The New York Review of Booksで読むことができる [Link]。
未来について語るのは難しくて、誰がしても嘲笑される可能性がある。下手したら、飲み屋のおじさんの自説も研究者の洞察も、受け手次第では目くそ鼻くそになる。ダイソンに対する聴衆の感じもそうだった。でも、ダイソンはそういうレベルの話をしているのではないのだろうと僕は感じた。レイ・カーツワイルの「The Singularity Is Near(邦題:ポスト・ヒューマン誕生)」とダイソンの考察は、表面で似ていても思考の方向が違うと思う。7月にダイソンの書評が出るらしいので、もう一度じっくり読もう。
0 件のコメント:
コメントを投稿